広島鈴木誠也外野手(21)が、2試合連続となるサヨナラアーチをかけた。2点を追う9回1死一、三塁、オリックス平野から左翼席に逆転3ラン。前日17日にも延長12回でサヨナラ2ランを放っており、2試合続けての劇的弾はプロ野球10人目の快挙だ。チームを今季最長の5連勝に導き、2位中日とは今季最大の6ゲーム差。神懸かった広島が首位を突っ走っている。

 鳥肌ものの2戦連続サヨナラ弾は、2点を追う9回1死一、三塁で飛び出した。鈴木の放った大打球は、真っ赤に染まった左翼スタンドに舞い降りた。オリックス平野のフォークに「食らいつきました」。神懸かり的な一撃だった。連日のお立ち台では「最高です」を連呼した。

 「うれしいというか、僕も興奮していて、あまり覚えていません。奇跡です。抜けたフォークだった。うれしいのか、分からない。怖いです」

 動物的な目で、獲物を狙っていた。相手は1秒0台前半のクイックで150キロの直球を投げ込んでくる平野。足を上げていたのでは対応できない。前日の9回に三ゴロに倒れた残像があった。とっさの判断でノーステップで打った。「究極というか。とにかく食らいつくというだけ」。ありがちな「自分のスイング」。鈴木はそんな次元で戦っていなかった。

 ロッテ角中や清田は追い込まれるとノーステップ打法を使う。鈴木はその映像を見て感じていた。「正直、勇気がいることだと思う」。初めて打ったのは4月29日の中日戦(マツダスタジアム)。チェンジアップが武器の若松にとっさに出た。「とても対応できないと思った。それがいい結果になった」。前日もノーステップで放り込んでいた。怖さがなくなり、迷いはなかった。

 前日は延長12回にサヨナラ本塁打。広島ではリーグ優勝した84年の長嶋以来2人目の快挙だった。緒方監督も「いや、本当にね。神懸かっているよ。今どきの言葉で言うなら、神ってるよな」と興奮冷めやらぬ様子。紛れもないスターも誕生し今季最長の5連勝を飾った。貯金はついに10となり、2位中日と6ゲーム差。この強さはもう、奇跡ではない。【池本泰尚】