これがパ・リーグの力なのか…。先発陣で左の軸に成長した阪神3年目岩貞祐太投手(24)がソフトバンク打線にのみ込まれた。5回に押し出し四球を与えた後、城所に満塁弾を浴びて5失点。満塁被弾は交流戦だけで2本目で、巨人菅野に投げ勝つなど交流戦前は0・88を誇った防御率は交流戦3戦を経て2・64と悪化した。あの安定感を取り戻してくれ!

 福留のジャンピングキャッチがわずかに届かない。フラフラと舞い上がった打球は右翼ポール際の最前列にポトリ。またしても満塁弾を献上し、岩貞はマウンド上で右翼席に視線を向け、立ちつくすしかなかった。その背後。「0」ばかりだったスコアボードに重たい「5」が刻まれた。

 「(走者を)出しても粘れれば良かったんですが…。走者を出していかに粘れるか。大胆にいくところと、そうじゃないところの状況を冷静に考えていかないといけなかった」

 4回まで1安打無失点。3奪三振で2併殺など、ソフトバンク打線を封じていた。そんな5回。先頭5番松田にあっさり四球を与えてしまい、状況が暗転していった。不運な当たりにも泣いて7番鶴岡、8番高田と2連打。投手武田を三振で2死満塁となり、1番今宮にプロ2度目の押し出し四球を与えた。痛恨の形で先制点を奪われ、悪夢はさらに深まった。

 2番城所にも制球が定まらず、3ボール1ストライク。141キロ直球が真ん中高めに浮く。「あのカウントで、あの球種を投げざるをえなかったのが…」。圧倒的に打者有利のカウントで投じた失投を、右翼に強く打ち返される。最も避けなければならない結果に甲子園全体がどよめいた。

 突如の大乱調。5回4安打4四球5失点で4敗目を喫し、金本監督も「先頭打者への四球でしょう、あの回は。もったいない。それまで良かったからね、岩貞は」と悔しさを隠しきれなかった。

 0・88の防御率を引っさげ、交流戦でもチームをけん引する役を期待された。西武戦、日本ハム戦、ソフトバンク戦と3試合に先発し0勝2敗。17イニングで17失点と打ち込まれた。3日西武戦ではメヒアに満塁弾を浴びており、6月だけで2本目の満塁被弾。必死に防いできたビッグイニングを、パ・リーグの強打線に刻まれた。

 交流戦明けも変わらずローテーションの一角を任される立場。脳裏に焼きついて離れないであろう満塁弾2本を、進化への材料に変えるしかない。【山川智之】

 ▼阪神の投手が同じ月に満塁本塁打を2度打たれたのは、07年ボーグルソン以来、9年ぶり。同投手は9月19日巨人戦(甲子園)でゴンザレス、同26日横浜戦(横浜)で佐伯貴弘に打たれた。