<阪神4-6中日>◇27日◇甲子園

 阪神のクリス・リーソップ投手(25=3Aリッチモンド)が衝撃デビューを飾った。27日に1軍選手登録され、中日戦(甲子園)の8回にいきなりマウンドへ。先頭打者からこの日最速の156キロ直球で空振り三振を奪うなど、3者凡退に抑えた。全8球はすべて150キロ台のストレート。チームは中日に逆転負けを喫したが、勝ち負け以上に大きな収穫。北京五輪で球児が不在となっても、快速リーソップがいる。

 たった1球で球場の雰囲気は一変した。リーソップがブルペンカーで登場。このとき、スタンドの拍手はまばらだった。ところがその右腕を振り下ろした途端に、どよめきが起こった。スピード表示は153キロ!

 中日藤井は果敢に打ちに行ったが、ファウルチップ。ブルドーザーのような迫力で、次々と豪速球を繰り出す。圧巻は5球目だ。カウント2-2から外角に力いっぱい投げた。空振り三振。この日最速156キロを計測した。

 「まっすぐをストライクにすること。アウトを取ることをメーンに考えた。いい投球ができたよ」。

 小池、谷繁も危なげなく封じ、打者3人で斬った。8球すべて直球勝負。新戦力が衝撃のデビューを果たした。

 底知れぬ潜在能力を感じさせた。来日からまだ9日目。ブルペンで投球練習は行ったが、実戦からは1カ月近く遠ざかっていた。当然、異国の土地に慣れる時間もない。しかもメジャーにはない独特の応援スタイル。満員の甲子園では、よほどの強心臓でなかったら、結果は残せない。この日、下柳の抹消により、急きょ1軍に登録されたが、ふてぶてしく、こう宣言していた。「時差ボケなんて関係ない。5万人の前に立てば、そんなものは吹き飛ぶ」。その言葉は強がりではなかった。いきなり初登板の機会が巡ってきたが、マウンドでは集中し切っていた。「何も見えないし、何も聞こえなかった。キャッチャーしか見てなかった」。抜群の精神力で、最強のリリーフ陣に仲間入りした。

 これで一気に守護神候補に躍り出た。五輪期間はウィリアムス、久保田がクローザーの本命だが、実力未知数だったリーソップが片りんを見せた。岡田監督は言った。「ボールは速いと言うてるやん。8月に戦力として計算しているわけやから」。順調に結果を残していけば、最後を務める可能性は十分にある。それだけの投球を見せた。あとは、この日は投げなかった変化球の精度に注目が集まる。「20ドル払ってくれたら見せてあげるよ」。どうやらジョークにも自信があるようだ。自身の最速は157キロだが、大台到達も夢ではない。体調が万全になれば…、期待は膨らむ一方だ。

 ファンだけでなく、ライバル球団にも衝撃を与えた。2位巨人から田畑スコアラーが偵察に訪れたが、豪腕ぶりにため息を漏らした。「ストレートの威力がいい。あれだけスピード感が出るのは、それだけ能力があるということ。コントロールもよさそうだ」。他球団にとって、8月は猛虎追撃のラストチャンス。そんな淡い思いを、リーソップの右腕が打ち砕いてくれる。【田口真一郎】