<楽天2-1西武>◇28日◇Kスタ宮城

 楽天が劇的サヨナラ勝ちで開幕5戦目にして初白星をつかんだ。田中将大投手(21)が今季2度目の先発。3回に1点を先制されたが、打線が8回に追いつき延長戦に突入。最後は1死一、三塁から渡辺直人内野手(29)の内野安打で、マーティー・ブラウン監督(47)に就任初白星をもたらした。10回1失点の田中は、球団初の延長完投勝利を挙げた。

 三塁側ベンチのレカロシート最前列から真っ先に駆けだしたのは、初めて10回完投した田中だった。人懐っこい笑顔で跳びはねながら、サヨナラ打の渡辺直に飛び込んだ。今季初勝利にしては少し派手すぎる大きな輪ができた。その真ん中に田中がいた。

 小雪が舞うKスタ宮城のマウンドで、躍動する姿が雄々しかった。気温2度。「お湯入りのペットボトルで手を温めながら」ボールを低く低く集めた。3回に先制を許したが「しり上がりではなく、すべての面で最初から良かった。何より真っすぐが」。力勝負にめっぽう強い西武打線のバットを4本も折った。4番中村から3奪三振を含め、中軸を計1安打と眠らせた。9回2死、5番ブラウンへの3球目にこの日最速の146キロ。10回118球を投げ終えると、ブラウン監督から「まだ先は長い。無理するところでない」とやんわり降板を指示された。余力十分で敵を御した直後、田中が「信じていた」サヨナラの瞬間はきた。

 ブラウン監督は選手の頭を1人ずつこづき、8回2死からの逆転をたたえた。そして「選手にしぶとさと執念がある。このチームを気に入っている」と黒子に徹し、初勝利の会見を結んだ。1月31日、キャンプイン前夜のミーティング。「何が起ころうと私は選手に責任を負わせることはしない。監督として全力で守る。どんな状況でも1つになって、1年間戦おう」とみんなの前で約束していた。

 0-1で敗れた20日の開幕戦。選手たちと最初に交わした契りを、ブラウン監督は守った。9回無死一塁で、1番に抜てきした聖沢に送りバントのサインを出した。1球見送った後、強攻し結果は併殺打。好機はついえた。試合後厳しい指摘を受けた監督は「あそこでヒットなら一、三塁になっていた」と説明したが、真実は違った。送りバント継続のサインを見誤った3年目外野手をとっさにかばっていた。

 翌日の報道で発言を知り感銘を受けた選手が多かったという。10年楽天にとって意義ある1敗。田中が「4連敗でも普段の登板とまったく変わりなかった」と言った背景に、新指揮官の哲学がにじんだ。この日抑えの福盛が登録抹消になるなど、チームは完ぺきな状態ではない。だが確かに勝利へ1つになっていた。

 歓喜に紛れウイニングボールは紛失した。でもブラウン監督は「優勝した時にもらえれば、それでいい」と固執しなかった。田中の力投を呼び水に、ボテボテの内野安打で、総力戦でつかんだ1勝。全員で、を1年通す。【宮下敬至】

 [2010年3月29日8時46分

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