巨人のドラフト1位ルーキー沢村拓一投手(22=中大)が6日、宮崎キャンプでフリー打撃に初登板し、内角速球で坂本勇人内野手(22)のバットを2度へし折る快投を見せた。直球、スライダー、カーブを織り交ぜて55球。特に得意の直球の威力は抜群だった。原監督ら首脳陣は絶賛し、川口投手総合コーチは開幕投手候補に挙げた。15日には紅白戦に登板予定。いよいよ即戦力右腕のエンジンがかかってきた。

 これ以上ない対戦相手、坂本のバットを砕いた。午後1時25分、沢村の圧巻ショーが始まった。フリー打撃投手のトリを飾る4番手でマウンドへ。名前を呼ばれると小走りで駆け上がった。対戦相手は同学年で不動の遊撃手坂本と、2年前のドラフト1位大田。黄金ルーキーの通過儀礼として、舞台はそろった。

 その15球目、坂本の2打席目の初球だった。内角をえぐった威力抜群の直球で、坂本のバットを真っ二つに粉砕。今キャンプ最多1万5500人の観衆を集めた球場から、どよめきが起こった。さらに27球目。再び内角の直球で2本目のバットを折った。スライダー、カーブを織り交ぜた全55球中、安打性の当たりは6本。「7割の力でリズムよく投げられた。多少力んでしまうところはあったけど、実戦感覚を養えてよかった」と、充実した表情を浮かべた。昨季31本塁打を放った坂本は「球に力があったし、思ったよりも球がきていた」とうなった。

 マウンドに立っても「緊張しなかった」。堂々と投げ込んだ。これまで3度のブルペン投球は「リズムが悪かった」と斎藤投手コーチは指摘する。テンポの悪さから、制球が定まらず、変化球もほとんどボールだった。だが、リズムを意識したこの日は制球も安定。「バッターが立って投げた方が投げやすいです」と、実戦向きのタイプを証明した。原監督は「明らかにブルペンよりもいいものが出ているなという印象。打者は『真っすぐが来る』『変化球が来る』と分かっていながらの中ですからね」と評価。キャンプ初日のブルペン投球では「今日はよくない。悪いですよ」とバッサリ酷評した川口投手総合コーチも「一級品です。球のキレは今の投手陣の中でNO・1でしょう。内海、東野以上です。あれで7割だったら開幕投手ですよ」と大絶賛だった。

 前日5日、沢村は「疲れがたまってきているのもあって、下半身に力が入らないんです。少し焦るところもありますし」とこぼしていた。それを難なくはねのけた。15日には紅白戦登板が予定され「これから実戦が入ってくるので、もっとキレとスピードを出せていけたら」と、意欲をみせた。開幕ローテーション入りへ、着実に歩み続ける。【斎藤庸裕】

 [2011年2月7日8時15分

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