<広島0-5ヤクルト>◇22日◇マツダスタジアム
好調コイ打線を止めたのは、今季初先発のヤクルト山本斉(ひとし)投手(21)だった。臆することなくストライクゾーンで勝負し、かわすのではなく、ねじ伏せた。7回を投げて2安打無失点に抑え、プロ3戦目の先発で初勝利。由規、館山に続く完封勝利はならなかったが、3試合連続の完封勝ちは、球団タイ記録となった。
ヒーローインタビューを終え、引き揚げようとした山本斉の頭上に、ファンの少年の声が響いた。「ボールください、ボールください」。ひときわ大きなその声と差し出されたグラブに、山本斉も視線を送ったが、手の中にあるボールをあげるわけにはいかなかった。プロ初勝利のウイニングボール。「やれねえな。これは」と、大事そうに持ち直した。
これまでの下積みを思い出しながらの投球だった。5回、丸に四球を出したところで、苦しかったオフの走り込みを思い出した。20メートルダッシュ300本が基本。夜、布団に入っても翌日の練習が嫌で3時間も寝付けない毎日だった。それを思い出し「あれだけやってきたんだから大丈夫。こんなことでは崩れない」と自分を奮い立たせた。
ローテーションの谷間にチャンスが巡ってきた。「4年目だし、もう結果を出さないとまずい。チャンスをもらえたら間違いなくものにするつもりだった」と気持ちは背水の陣だった。カーブ、スライダー、シュート、ツーシームに、1カ月前、遊びの中で覚えたカットボール。すべての球種で勝負できたのは、それだけ気持ちがこもっていたからかも知れない。
実は右肘の靱帯(じんたい)が昨春から切れたままだ。手術を勧める声もあった。だが、復帰まで1年半かかるという医師の説明を聞いて断念した。切れたままの状態で投げることに自分を慣れさせた。ようやく恐怖心が抜けたのは今春のことだった。鬼気迫ったように腕を振る投球スタイルからは、想像できないハンディを抱えている。
同期の由規からつながった球団記録となる完封の流れを引き継いだ。「あいつとは高校時代、一緒に東北でやってた時からだし、あいつが頑張ってると僕もうれしい。2人で勝ち続けていこうというのは、いつも話している」という。小川監督も「今日は山本(斉)に尽きる」とひと言。ヤクルトにまたひとり、頼もしい若手投手が出てきた。【竹内智信】



