<楽天2-0ソフトバンク>◇26日◇Kスタ宮城

 楽天のドラフト1位ルーキー塩見貴洋投手(22)がチームを今季初の6連勝へ導いた。新人王の権利を持ち、5勝で並んでいたソフトバンク岩崎に投げ勝ち、7回途中5安打無失点で6勝目(7敗)。規定投球回数にも到達し、防御率2・59でリーグ8位に躍り出た。ロッテ伊志嶺、西武牧田、日本ハム斎藤らと混戦模様の新人王争いが、ますます面白くなってきた。

 22歳は中4日でも成長する。首位相手に1週間で2度目の登板。札幌入り後の23日、佐藤コーチに「投げるヤツがいない。どうだ」と聞かれ「行きます」と即答だった。青年らしく勢いだけ、じゃない。塩見自身、好投の予感はあった。

 急な話だったが「夏は誰でもしんどい。いかに100%の力を出すかが大切」と悟っていたので調整はさほど問題ではなかった。気になるのは配球を含めた投球内容。登板が決まった直後、この日殊勲打を放った先輩内村と野球談議し頭を整理した。魚介類は苦手。北の大地でトウモロコシ、じゃがバターを食べながら打者心理を質問していった。

 塩見

 内角を突くことは大切だと思うんですけど、数センチでも甘く入ったらホームランです。

 内村

 そりゃそうよ。プロだもん。バッターから一番遠くて、飛ばないのは…、外角真っすぐじゃん。

 塩見

 岩隈さんにも相談してみたんですけど。「外真っすぐが一番大切。困ったらそこ」って。軸はやっぱり外角。磨かないと。

 内村

 守ってると、テンポも大事だよ。

 塩見

 首を振って選択したボールは、結果が悪いんです。今はキャッチャーの方についていきます。

 内村

 前も伊志嶺が考えてくれただろ。大丈夫。

 右打者に食い込むクロスファイアでプロのスタートを切ったが、表裏一体のもろさを学んだ。外角直球の重要性を知り、シンプルな投球に徹したのが1週前。この夜は「直球が良かったので外角を基本としながら」とした後、「内角も有効に突けた」と続けた。2回、小久保を外角145キロ2球で追い込み最後はフォーク。3球で空振り三振。4回カブレラは外角を意識させた後、146キロのクロスファイア。空振り三振。「駆け引き」を手中にした6勝目だった。

 この時期権利があれば、新人王を狙わない選手はいない。「意識した」というライバル、相手先発岩崎に投げ勝ってチーム6連勝。実に価値がある。「乗らないと話にならない」としていた規定投球回もクリアした。自分を表に出さないが、チーム事情に照らしながら青写真を描く。「絶対CSに行く。僕はローテを絶対守る。ウチには岩隈さんと田中がいる。もし3戦までもつれたら、僕が先発できるようなポジションにいるよう努力する」。群雄割拠のパ新人王レース。本命は塩見だ。【宮下敬至】