<DeNA0-6巨人>◇13日◇横浜

 巨人沢村拓一投手(24)の意志力が生んだ完封劇だった。序盤はストライクゾーンの直球で押しに押して、アウトを積み重ねた。中盤からは変化球も効果的に使い、三振を量産。モットーでもある「制圧する」という言葉通りの投球で、9回を1安打完封と、DeNAをねじ伏せた。チームの勝利へ、プロ2年目のあるべき姿へ-。自ら進むべき道を切り開く、右腕の「意志力」に注視した。

 沢村が熱かった。8回表からアンダーシャツを脱ぎ半袖で小雨が降るマウンドに向かった。俺は、まだ投げられる-。沢村が示した意志をベンチも味方も誰もが疑わなかった。9回は150キロを超える直球を7球。まだまだ十分に余力を残しながらDeNA打線を1人で「制圧」した。

 2年目には2年目の覚悟があった。「去年は内海さんが引っ張っていってくれて自分は好き勝手投げさせてもらった。今年は内海さんのようにならなければいけない」。11勝を挙げた昨季のおごりではない。投手陣の柱として強い自覚を示していた。

 ここ2戦は先発投手としての役割を果たしながらも敗戦投手に沈んだ。試合後の通路は速足でバスに向かい口を閉ざした。「試合に負ければ責任の全ては先発投手にある。先発投手は1週間に1回しか仕事がない。だから何も言い訳は許されない」。同じコメントを繰り返した。

 2年目とは思えないぐらいの責任を背負ってマウンドに立っている。中継ぎ陣が連日の登板でブルペンの状況が苦しいことは事実。「中継ぎの人たちは最近、毎日肩をつくっている。完投することで1日空けられれば」と、何が何でもブルペンを救うと誓った。だからか、ベンチからマウンドには毎回、走って向かった。与えた安打は、わずかに1本。野手をグラブタッチで迎える姿には、初々しさよりも貫禄が漂っていた。

 2年目だから分かる。8日の阪神戦で宮国が初登板初勝利をマーク。同期入団の後輩を弟のようにかわいがり、先輩としてけん引する。「(宮国)椋丞の勝ちは本当にうれしかった。その勢いに僕も続きたい」と祝福した後に「今年は椋丞のことを悪く書かないで下さい。その分、僕がダメだったら、いくらでも非難は受けます」と付け加えた。沢村が宮国の盾になれるかは分からない。だが、その気持ちが若手を支え、自分自身を鼓舞する糧になっている。

 2度の敗戦投手の末につかんだ今季初勝利。5回からの6者連続三振を含む1安打10奪三振で最後までマウンドを守り抜いた。「1回から9回まで球威が出せた部分はちょっとはましになったと思う。(三振だけじゃなく)打ち取ることが仕事。勘違いしないようにしたい」。チーム内での仲間意識を持ちつつ、個としての圧倒的な力。それが、沢村の「意志力」だ。【為田聡史】

 ▼沢村が1安打でプロ入り2度目の完封勝ち。同投手はプロ初完封の昨年10月8日中日戦も1安打。2年連続で1安打完封勝ちをマークしたのは98、99年川村(横浜)以来で、巨人では38~40年スタルヒン、71~73年堀内に次いで3人目。新人から2年連続で1安打完封となると、金田(国鉄)が50年10月8日西日本戦、51年4月13日阪神戦で記録して以来、61年ぶりだ。巨人では沢村栄治が新人の36年、2年目の37年とプロ入り2年連続ノーヒットノーランを達成しているものの、新人から2年連続で1安打完封は球団史上初めてになる。また、沢村は5回に振り逃げを含め、プロ野球14人目の1イニング4奪三振。そのイニングの打者4人すべて三振は6人目で、1イニング打者4人オール空振り三振は93年野村(オリックス)に次いで2人目と珍しい。