<広島0-4巨人>◇28日◇マツダスタジアム

 ウイニングボールを、そっとポケットにしまった。今季14試合目の登板で、ようやく納得の仕事ができた。最後の打者を捕邪飛に打ち取ると、巨人内海哲也投手(30)はグラブを手でたたき、口元をぐっと結んだ。「今年初めてなんで、気持ちよかったです。6連戦の真ん中だったので、少しでも長いイニングを投げて中継ぎを休ませようと。うれしいですね」と、満足そうに笑った。

 快投を象徴したのは好調堂林との対決だった。2回の第1打席は直球を捨て球にして変化球でカウントを稼ぐと、最後も内角低めのスライダーを振らせ空振り三振。第2打席も同じ低めのスライダーで2打席連続三振に切った。タイミングを完全に外し、プロ3年目打者に貫禄を見せつけた。

 今季初完封までの過程でチーム内のライバルに刺激を受けていた。今季FA加入した同じ左腕の杉内に対し「力の違いをまざまざと見せつけられている。杉内さんはチームに勝ちがほしいときに必ず勝ちを持ってくる。やっぱりそれですかね」と、先発投手の最大の役割を目の前で教えられた。そのヒントを踏まえ、まずは自分のスタイルを明確にした。「走者を出してもビビらないで冷静でいられるかが大事」。規定投球回数到達投手の中で、最多の被安打89も防御率は1点台をキープしている。勝負どころの制球と投球の組み立てを駆使して、勝ち星を7つまで積み上げた。

 最後までマウンドを託した原監督も「今日は非常に良かった。すべてのボールの精度が良かった。阿部との息もぴったりだった」とたたえた。今季ここまで、リリーフ陣から手渡されたウイニングボールはスタンドに投げ入れていたが、やっと“1つ”つかんだ記念球。エースのプライドを内海が広島で誇示した。【為田聡史】

 ▼内海が今季初、広島戦では07年7月27日以来の完封勝ち。内海の完封勝ちは通算8度目となったが、これで06年から2、1、1、1、1、1、1と7年連続。06年から毎年完封を記録している現役投手は内海だけだ。巨人で7年連続完封勝ちは、91~98年槙原が8年連続で記録して以来。巨人の左腕では59~64年伊藤芳の6年連続を抜いて最長となった。