<巨人2-1中日>◇29日◇東京ドーム

 大事な首位攻防戦で巨人沢村拓一投手(24)がトンネルを抜けた。立ち上がりから丁寧に投げ、中日につけいるスキを見せない。味方の失策もあって5回に1点を失い、7回途中に降板も、4安打、自責ゼロで5月20日以来の5勝目をマークした。4連敗、5戦勝ちなしの不振からやっと脱却。ここからの巻き返しが楽しみになる内容だった。

 お立ち台へ向かおうとベンチを飛び出した沢村が、何のためらいもなくウイニングボールをスタンドに投げ入れた。7回途中1失点、6試合ぶりの白星。喜んでいないわけではない。「自分に納得していない部分はありますが、明日につながる戦い方はできたと思います」。自分1人で勝ったのではない。そんな思いが素直に態度となって表れた。

 己に打ち勝った。ここ5試合は勝ちに恵まれず4敗。初優勝した交流戦も1勝4敗。「チームのローテーション投手として貢献できなかった」。当然、悔しさは募った。勝ちたい。投手の本能は、強くなる。そこを沢村はグッと抑えて、冷静になった。「欲を出して『勝ちたい』と思ってると空回りする。勝てないことを『こんなもんじゃないんだ』と思うか、現象を受け止めて謙虚に受け入れてやっていくのとは違うと思うんです」。沢村は、後者だった。

 チームが勝てばいい。その一心で調整してきた。「5回5失点でも、9回0点でも、勝ちは勝ち」。チームに勝利を呼び込むため、遠投でフォームを再構築してきた。すべては高めに浮きがちだった制球力を取り戻すため。狙い通り、この日の105球中60球が変化球で、テンポよく低めに丁寧に投げた。「逆球も多いけど、コースと低めに投げるのを意識してやっています。フォークは今年一番よかったですね」と光明を見いだした様子だ。

 5回に訪れた正念場にも動じなかった。阿部の二塁送球が乱れた際に1失点したが「チームでやっているので」と逆に奮起していた。登板前日、沢村は言った。「今は自分1人じゃない。野手の方、監督、コーチ、期待してくれたり、後ろで守ってくれたり、そういう人たちのために、本当に頑張らないといけない」。頑張りどころは、ここだ。2死三塁、1番荒木を初球スライダーで打ち取り、流れを断ってみせた。

 原監督も「本来の相手の打者に的を絞らせないというかね、いい投球をしてくれた。何かこう、いいきっかけにしてくれるとね」と復活の兆しを感じ取った。これで5勝7敗。沢村は勝利インタビュー後の取材を「久しぶりだったな」と笑って締めた。沢村が壁を1つ乗り越え、巨人投手陣の厚みも増した。【浜本卓也】