阪神鳥谷敬内野手(31)が今季取得した海外フリーエージェント(FA)権を行使せずに残留する意思を固めたことが11日、分かった。熟考を続けていたが、今日にも球団に通達するとみられる。今後は通常交渉に移り、単年契約を希望する見込みだ。来オフに再びメジャー挑戦を視野に入れる可能性は残るが、虎党もホッとひと安心。13年シーズン、阪神入団が決定的な西岡剛内野手(28=ツインズFA)と最強二遊間コンビの結成や!

 悩みに悩み抜いた末、縦じまを選んだ。鳥谷が来季プレーするのは阪神だ。8月に海外FA権を初取得。愛着ある虎に残るのか、長年の夢であるメジャーに挑戦するのか。1カ月間の熟考を終え、FA権を行使せずに残留する決意を固めた模様だ。今日にも球団へ報告するとみられる。

 メジャー志向はプロ入り前、早大時代からあった。シーズン終了間際には「(メジャー挑戦か残留か)どちらに傾いている、とかはない」と五分五分の胸中を明かしていた。FA申請期限は明日13日まで。球団から強く慰留されながらギリギリまで態度を保留した。心が揺れていたのは間違いない。

 国内球団はもちろん、米国からも熱視線を送られていた。8月中旬までにダイヤモンドバックス、マリナーズが本格調査を開始。パイレーツ関係者は「守備だけなら十分通用する」と評し、インディアンスやツインズのスカウト陣は9月に打撃練習までチェックしていた。関係者の話を総合すれば、アスレチックス、ジャイアンツ、ドジャースなども、虎の遊撃手に興味を示していた。

 ただ今季もマリナーズ川崎、ツインズ西岡が結果を残せず、日本人内野手への見方は依然シビアだ。厳しい風に立ち向って夢を追うべきか、育ててくれた阪神でV奪回を目指すべきか、熟慮を重ねた結果、虎への熱い思いが勝った。

 球団はこれまでの交渉で単年バージョンと3年の複数年契約を提示している模様。鳥谷は例年通り単年契約を希望するとみられ、来オフは再びメジャー挑戦を視野に入れる可能性が高い。とはいえ国内に残るとなれば、野手キャプテンとして目の前の1年間に集中する姿勢を貫くはずだ。

 5位に低迷した今季は打率2割6分2厘、8本塁打、59打点と実力を発揮しきれず。一方で4年ぶりの全試合フルイニング出場を達成し、精神的支柱としても欠かせない存在だ。前日10日には平野が国内FA権行使を表明し、他球団への流出が避けられない情勢。激震が走っていた虎には、何よりの朗報となった。

 チームはすでにツインズからFAの西岡獲得が決定的。二塁西岡との二遊間は、再起を図る和田阪神の大きな目玉で核となりそうだ。プロで節目の10年目、鳥谷は来季も虎逆襲のキーマンとなる。

 ▼鳥谷は昨年取得した国内FA権に続き、海外FA権利の行使を見送ることになった。昨年まで阪神からFA宣言したのはのべ23人。宣言残留した同17人と、移籍した6人(松永→ダイエー、仲田→ロッテ、新庄→メッツ、藪→アスレチックス、野口→横浜、藤本→ヤクルト)のすべてが、取得初年度の権利行使だった。

 このオフの藤川の海外FA、平野の国内FAも今シーズン取得した権利。つまり、権利を取ったオフに行使しなければ、ずっとチームに残っていることになる。

 鳥谷の場合は、来年オフ以降のメジャー挑戦に含みを持たせている。阪神史上初の権利を保有したまま翌年以降に行使する選手となるかもしれない。

 ◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日、東京都生まれ。聖望学園3年夏に甲子園出場。早大から03年ドラフト自由枠で阪神入団。04年4月2日巨人戦で1軍初出場。04年9月9日ヤクルト戦から歴代6位の1178試合連続出場。ベストナイン3度、ゴールデングラブ賞1度受賞。180センチ、77キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸は3億円。