優勝へのマジックを着々と減らす巨人が誇る救援ユニットが、大記録を達成しようとしている。12日現在、ホールドポイントはスコット・マシソン投手(29)が26、山口鉄也投手(29)が29。西村健太朗投手(28)はセーブ数が29。3人そろって「30」の大台到達を確実としている。救援部門の成績の上位を1チームの3人で独占することは極めて珍しい。1人が欠けても成立しない最強ユニット「スコット鉄太朗」の思考回路に潜入する。

 「スコット鉄太朗」が、00年代に無双を誇った久保田-ウィリアムス-藤川の阪神の救援ユニット「JFK」に肩を並べようとしている。今週中にも、セーブ、ホールドポイントの「トリプル30」を達成する。金字塔は近い。聞くしかない。健太朗、どうだ。

 西村

 なんで僕がセーブを稼げるか、知ってますか?

 マシソンと山口さんが、相手の戦闘意欲を刈り取ってるんですよ。僕はその後だから、おまけですよ。

 そうはいっても、巨人の日本人投手で、2年続けて30セーブはいないよ。

 西村

 あ、それ、偶然です。僕じゃない。もっと言うなら、セーブは、みんながつないでくれるから。

 らちが明かない。ヤマ、どうだ。

 山口

 僕は抑え、ダメでした(11年)。健太朗はすごい。ここ数年、本当にコントロールがいい。最後を締めるって大変なんですよ。それに、彼は優しい。考えてみて下さい。朝早起きして、寮に寄って、若い選手を球場に乗せてくる。出来ないッスよ。みんなで「30」をクリアできたら一番いいけど。僕個人の成績は別に気にしてません。

 西村

 だって30分か1時間、早く起きるだけですから。僕もそうしてもらってきたんで。楽しいですよ。雑談でほぐしてもらって。

 遠慮なのか、本音か。マシソン、頼む。

 マシソン

 西村はセーブ数トップ。山口は、日本で1番の中継ぎ。彼らと一緒にやれていることを、誇りに感じる。それぞれが役割を果たしている結果、3人でいい数字が残せると思ってる。自分の力じゃないよ。

 3人に共通項がある。超一流は、決して自分を大きく見せない。実力に対して謙虚で、常に疑問を持つ。逆に、周囲の実力は素直にたたえ、感謝の気持ちを常に持つ。強気がそろうプロ野球界では少数派である。古来日本人の美徳とされている「謙譲の精神」が、スコット鉄太朗の根底には流れている。【宮下敬至】

 ◆スコット鉄太朗

 昨年6月30日、マシソン-山口-西村の継投で勝利。日刊スポーツ紙面で金子航記者が3人の名前を融合させ命名した。定着はしていない。アニメ「とっとこハム太郎」のハムスター「ハム太郎」が、自身のツイッターで「友達なのだ」とつぶやき、一瞬だけ話題となった。

 ◆「スコット鉄太朗」強さの極意

 あらゆるゲーム状況になっても力を発揮する。先発、中継ぎ、抑えという、現代プロ野球で確立されている投手の分業を、3人はすべて経験している。連投、イニングまたぎ、ロングリリーフも悠々とこなす。投手を使い果たして延長12回引き分けに持ち込んだ10日の広島戦では、9回から山口が2イニングをリリーフ。11回マシソン、12回西村で危なげなかった。原監督は「山口の2イニングで、そろばん勘定ができた」と絶賛。西村に万が一があった場合は、遊撃の坂本を登板させる青写真を早々と描いていた。

 ◆30トリオ

 2人が30ホールド(H)をマークし、1人が30セーブ(S)を記録したチームは、12年日本ハムまで過去に5例。07年阪神のJFKは久保田(46H)ウィリアムス(42H)がホールド上位を独占し、藤川(46S)がセーブ王に輝いた。「40トリオ」はこの3人だけ。08年日本ハムの「HAM(HISASHI

 AND

 MICHEAL)の方程式」は、武田久が21H、マイケルが28Sで、他に建山が22Hを挙げている。巨人の救援トリオでは86、87年の鹿取、角、サンチェが有名。3人は2年間でのべ309試合に救援登板し、チーム56Sのうち53Sを占めた。