なぜこのタイミングで?
プロ野球の加藤良三コミッショナー(72)が19日、東京都内のホテルで行われたオーナー会議で、統一球問題の責任を取って今季のレギュラーシーズン終了後に辞任する意向を表明した。統一球問題を調査する第三者委員会の27日の最終報告を待たずに突然の辞意表明。後任は未定で、まさに山積する問題を“丸投げ”して球界を去ることになった。
引き際も「無責任」だった。オーナー会議の開会直後、加藤コミッショナーが辞意を表明した。会議後の記者会見で「統一球問題で野球ファン、関係者にご迷惑をかけた。それが大きな要因」と説明。統一球を調査する第三者委員会のヒアリングが一段落し、20年の東京五輪開催が決定したこともきっかけになったとし「スポーツ界にいい風が吹いている。野球界もフレッシュに体制強化を図っていくべき時期で、それは1日も早い方がいい」と、理由を語った。
会見ではきれいごとを並べたが「敵前逃亡」と言われても仕方がない辞任表明だった。8日後には統一球問題を調査する第三者委員会の最終報告書が明らかになる。コミッショナーの責任を厳しく追及する内容になるのは必至。やや沈静化していた批判の矛先が、統一球問題の“無責任会見”直後のように再び襲いかかってくる可能性が高い。第三者委から「辞めるべき」と通告される前に、自ら身を引いた形だ。
後任選びは難航が予想される。コミッショナー不在による球界の混乱を憂慮する一部のオーナーから「少なくとも日本シリーズ終了後まで続けるべきではないか」と慰留を促す声もあったが、加藤コミッショナーはかたくなにこれを拒否した。レギュラーシーズン終了(日本シリーズ開幕前日=10月25日)までに辞任することが決まった。
セは巨人が優勝目前。パも楽天が球団史上初の優勝へ向けカウントダウンに入っている。自身のプライドだけを守ろうとする姿勢が見え隠れする辞任表明に、会見ではタイミングを疑問視する質問が相次いだ。「なぜ今なのか?」「第三者委の報告を受けての辞任が自然なのでは?」「ペナントレースに水を差すと考えなかったのか?」。しかし、加藤コミッショナーは「たまたま社員総会(オーナー会議)があった」「なるべく早くフレッシュスタートを切ったほうがいい」など、同じような返答を繰り返した。
加藤コミッショナーは昨年7月に再任されて3期目(任期2年)の途中。7月10日のオーナー会議後に辞任する意思がないことを明らかにし「野球界が素晴らしい人材を次に選ぶということについて、協力もしたい。まずは第三者委員会に全面的に協力して報告を待ちたい」と話していた。後任にバトンを渡すまでは責任を持って組織改革に取り組む姿勢を示していたが…。最後はやっぱり「丸投げ」だった。【広瀬雷太】
◆加藤良三(かとう・りょうぞう)1941年(昭16)9月13日、埼玉県生まれ。幼少は両親の故郷である秋田県で過ごし、その後は東京在住。成蹊高から東大法学部に進み、65年4月に外務省入省。サンフランシスコ総領事、アジア局長、総合外交政策局長、外務審議官などを歴任し、01年10月から08年5月まで駐米大使。08年7月1日付で第12代の日本プロ野球組織コミッショナーに就任。11年に野球の国際化を目指し、米大リーグの公式球に近づけることを目的とした低反発の「統一球」を導入。<統一球変更問題をめぐる経緯と加藤コミ発言>
◆6月11日
NPBと労組日本プロ野球選手会の事務折衝で、NPB下田事務局長が統一球の変更を認め、加藤コミッショナーと相談しながら進めたと説明。
◆12日
加藤コミッショナーは記者会見で自らの関与と辞任を否定。下田事務局長も一転、相談していなかったと発言を翻す。「私は昨日(11日)まで全く知りませんでした。知っていれば公表していた。隠蔽ではない。まずガバナンスの強化について取り組みたい。不祥事だとは思っていません」
◆14日
12球団代表者会議で各球団へ事情説明し、調査のための第三者委員会の発足を決定。「ボールが変わったのは、ずれを修正する行為。世間で言う不祥事ではない。ファン、選手に迷惑をおかけしたことについては大変な失態であったと思い、猛省しております。コミッショナーの職に求められるものを1日1日実行していく」
◆27日
変更を知らなかったと説明する加藤コミッショナーを問題視した選手会がNPBに要望書を提出。「強いリーダーシップを発揮できるコミッショナーが必要」などと訴え、事実上の退任要求。
◆28日
第三者委が初会合、最終報告は9月末をめどとする。
◆7月1日
選手会の退任要求についてコメント。「日本は暴力団排除や薬物で世界で一番いい成績を残してきている。私の評価は歴史がすると思います」
◆10日
加藤コミッショナーはオーナー会議で混乱を招いたことを謝罪。「ファン、野球関係者にご迷惑と心配をかけたことをおわび申し上げる。地位に恋々とすることはない。野球界が素晴らしい人材を次に選ぶということについて協力もしたい」
◆19日
選手会が臨時大会でコミッショナー不信任を選手全員で確認。



