落合中日の厳冬更改に聖域はない。7日も球団事務所で行われた中日の契約交渉で、10人中6人が減額制限いっぱいの25%ダウンや制限超えの提示でサインした。今季140試合とほぼフル出場した大島や、プロ初の契約更改となったドラフト1位福谷も例外ではなく、3日連続で大減俸の嵐。1億9000万円から88%減提示で退団した井端の年俸を含めると、早くも6億980万円を削減した。

 「どう思う?」。大島は落合博満GM(59)から予想年俸を聞かれた。覚悟を決め「25%ダウンですか」と答えた。落合GMはにっこり。「賢いな、お前」とほほ笑んだという。提示額はドンピシャで今季7500万円から25%減の5625万円。レギュラーの大島でさえ、落合GMの信賞必罰査定に基づく厳冬更改の波にさらされた。

 「2日間の流れを見ていたのでマックスでいかれると覚悟してました」。大島は淡々と話したが、世間的にはびっくりだ。打率は3割をマークした昨年から2割4分8厘に落ちた。だがほぼフルの140試合出場。チームで4人しかいない規定打席にも到達した選手が、減額制限いっぱいの提示を受けること自体、極めて異例のできごとだ。

 落合GMは「契約は選手から聞いて下さい」とだけ話した。西山球団代表は「それだけのお金をもらっている人が残した成績としては物足りない」と毅然(きぜん)と言った。

 聖域なき厳冬更改の嵐は、新人福谷も巻き込んだ。即戦力の期待も9試合登板に終わった評価で、大島と同じく25%減の1125万円。「見合う結果を残せなかったし予想通り」と強烈な洗礼を受け止めた。プロ初の契約更改で、ドラフト1位が制限いっぱいの減額となること自体が異例中の異例だ。

 落合裁きはダメ出しばかりではない。大島は「首位打者、200安打のタイトルを取れと言われました」と明かした。「お前は球団の宝物」「センターはもう誰にも取られたくないだろ」「12球団で一番になれる」。相次ぐ親身な激励に「明確な目標ができた。力でタイトルを取りに行く」と猛発奮した。寮生活の心得を説かれた福谷は「現役時代の話もしていただきタメになった」と喜んだ。

 3日間の交渉で27人が更改した。現状維持が5人、アップも5人だけで合計わずか820万円。一方、ダウンは18人で合計4億2800万円。うち減額制限超えが2人で、減額制限いっぱいは9人も出た。1億9000万円からの88%減で退団した井端の年俸を含めると、早くも6億980万円を削減した計算だ。それでも最後は、みんなが笑顔で帰路に就く。救いの落合金言が竜戦士をヤル気にさせている。【松井清員】

 ◆減額制限

 野球協約第92条(参稼報酬の減額制限)には、契約更改の際に年俸が1億円を超える選手は40%まで、1億円以下の選手は25%を超えて減額されることはないと定められている。いずれも選手本人が同意すれば制限を超えて減額することができる。