阪神がキューバ選手の獲得調査を行うことが19日、分かった。巨人が4月にセペダ、DeNAが今月に入ってグリエルと同国を代表する選手を獲得し、一躍、“新市場”として注目を集めている。今季の阪神は4外国人選手が盤石だが、来季以降を見据えて担当者を現地へ派遣するなど、才能の宝庫と言われる野球大国へ補強戦略を広げていく。

 阪神が外国人選手補強で「キューバ市場」に参戦する。すでに国内他球団も動きだした人材の宝庫を放っておくはずはない。球団首脳はこう明かした。

 「今年(キューバから選手を)獲るというのは今のところ考えていないけど、オフに向けて調査はやっていきます」

 阪神は現在、投手でメッセンジャーと呉昇桓、野手でマートン、ゴメスと4人の外国人選手が申し分ない働きをしている。すぐ獲得に動く可能性は低いものの、来季以降を見据えて担当者を現地へ派遣するなどして調査する方針を決めた。

 有力選手の亡命などに悩まされてきたキューバは、年俸の一部を同国に還元することなどを条件に、海外プロ契約を容認した。16球団の1リーグ制で行われるキューバの国内リーグは例年11月に開幕し、ポストシーズンを含めて翌年の4月まで行われる。以降は代表チームの活動期間となる。リーグ戦開催時期が重ならず、これまでにも友好的な関係を築いてきた日本球界が移籍先の条件に合っていた。

 これに対し、真っ先に動いたのが巨人だった。4月、WBC代表でも活躍したセペダを年俸1億5000万円で獲得。いち早く日本野球に順応し、今月17日には広島前田から来日1号を放った。キューバ選手のレベルの高さを証明した。さらにDeNAが代表のスターとも言える万能選手グリエルを獲得。低迷打破の切り札と期待している。

 現在、キューバ政府が容認している移籍リストには、昨年の第3回WBC代表で活躍したトマス、ベル両外野手ら世界的に名前が知られた選手ばかりが挙がっている模様。今後は若手の有望選手などもリストに加わるかも知れない。ホワイトソックスの主砲となっているアブレイユ、ドジャースの新星プイグ、レッズの160キロ左腕チャプマンなどは亡命し、米大リーグでスター選手となった。今後、日本へ渡ってくるかもしれない若き才能を、将来にわたってチーム編成の要員に加えられるか。阪神が、門戸を開放した野球大国を徹底調査する。

 ▼解説

 野球王国のキューバは国内リーグの最高メンバーで代表チームを組み、五輪では92年以降の5大会で3度金メダル、2度銀メダルと無敵を誇った。一方で1959年にキューバ革命から共産主義に転じ、61年からプロ活動が禁止。他国でのプレーには亡命という手段しかなかった。

 12年ロンドン五輪から野球競技が除外され、WBCでも世界一を逃し続けた。モチベーションの低下から競技レベルが下がることを同国幹部が憂慮。昨年9月、政府管轄のもと、期限を設けるなどの制約をつける形で海外移籍を認めた。

 キューバ人にとって日本は親近感も高いあこがれの国。野球のレベルの高さも知られ、セペダやグリエルは前向きに日本球界に挑戦する。そこには、日本での経験を財産として持ち帰り、キューバ野球の復権に結びつけたい意向もある。

 ▼キューバの有力選手

 キューバ国内リーグの今季公式戦ではエルナンデスが最優秀防御率1.66、トーレスが最多の15勝、ガルシアが最多の21セーブを挙げた。打者ではグリエルの16本塁打がトップ。アテネ五輪金メダリストで35歳のエンリケスが打率3割6分7厘で首位打者に輝いた。13年WBCでエースだったヒメネスは13勝3敗、防御率2.02と健在。同大会で打率5割超だったフェルナンデスは国内リーグでも3割5分5厘の猛打ぶり。同大会で本塁打も披露したベルは21試合出場にとどまったが3割3厘だった。海外移籍容認以前はほとんどが亡命選手ながら、世界最速169キロ左腕のチャプマン(レッズ)や今季すでに15本塁打の新人アブレイユ(ホワイトソックス)ら多く活躍している。