平成のミスター・タイガース誕生!?

 明日9日広島戦(甲子園)に先発予定の阪神藤浪晋太郎投手(20)は流れを引き寄せる投球を誓った。7日は秘密兵器の“物干しざお”をトレーニングに導入。前回登板は6回10安打6失点と荒れたが、秘密兵器で修正は完了。物干しざおのような長尺バットで活躍した藤村富美男のように、チームを引っ張る。

 ダッシュを終えると、藤浪は長さ約2メートルの棒を両肩で担いだ。ゆっくり膝を折って歩いたり、カニ歩きを行う。午前11時過ぎの甲子園室内練習場。他の投手が黙々とダッシュに励むなか、普段見られない“物干しざおトレ”が始まった。表情は真剣そのものだ。約10分間、集中して取り組んだ。

 仕掛け人の伊藤トレーニングコーチは「秘密兵器だよ(笑い)。姿勢を正してバランスをよくするためにね」と説明。藤浪だけに用意されたスペシャルメニューを消化し確認を済ませた。

 「普通にしっかり自分のフォームで投げることですね。(修正は)そんなに強くは意識していませんが、ブルペンでも悪くなかったと思います」

 前回登板の1日ヤクルト戦(倉敷)では今季ワーストの10安打を浴び、ワーストタイの6失点と荒れた。中西投手コーチは「右膝が折れるのが早く、体重が後ろに残っていた。バランスが悪く、腕がなかなか出てこなかった」と指摘。その後はキャッチボールから軸足だけでジャンプしてから投じるなど、スムーズなフォームを取り戻すことに専念した。最終確認が、物干しざおというわけだ。

 カード頭は好調の岩田に譲る形になったが、中7日を有効活用できた。相手は通算6戦4勝無敗、今季初勝利を挙げるなど好相性の広島だ。上位のチームをたたいて、一気に上昇したい。藤浪自身、求められる投球は理解している。

 「相性は悪くないと思うし、すごい打たれているイメージはない。ムダな四球をなくしていきたい」

 山口投手コーチは「今季を占う9連戦」と位置づける。10日にはプロ初先発が予想される金田が控えるだけに、いい状態でつなぎたい。初代ミスター・タイガースのように、聖地を沸かせる投球を虎党は待っている。【池本泰尚】

 ◆物干しざおといえば…

 「初代ミスター・タイガース」の藤村富美男は、38インチ(約96.5センチ)の「物干しざお」バットを自分の腕のように操った。49年に本塁打、打点の2冠を獲得し最優秀選手にも輝くなど、数々のタイトルを受賞。58年に引退し、背番号「10」は球団史上初の永久欠番となった。ちなみに「物干しざお」のきっかけはゴルフで、遠心力によるドライバーの飛距離を実感したからだという。