<中日6-0阪神>◇5日◇ナゴヤドーム

 中日山本昌投手が球界最年長勝利を挙げた。49歳25日のベテラン左腕は阪神戦で今季初先発し5回を5安打無失点にまとめた。阪急浜崎真二が50年にマークした最年長出場、登板、先発のプロ野球記録(いずれも48歳10カ月)を全部更新。浜崎の48歳4カ月を塗り替える勝利を収め、ナゴヤドームでウイニングボールを握りしめた。

 スタンド観戦した山本昌の美智子夫人(33)は勝利の瞬間、大感激で両手を顔で覆った。「本当によかった…。絶対勝つと信じていました」。昨年12月に結婚し、苦難を間近で見てきた。史上最年長勝利は、二人三脚でつかんだ新婚初勝利でもあった。

 開幕から2軍。一番苦しかったのは8月だという。「2軍でゼロに抑えることができない試合が続いて…。8月に結果を出せなかったらやめると言っていました」。夫から聞いたのは引退覚悟だった。落合GMからは昨オフの契約更改で「50歳までやれ」と命令形で2年契約を保証された。「でも勝てないのは投手じゃない。選手として恥ずかしいと言って、甘えるつもりはなかった」という。

 夫は「年だから休むと動かなくなる」と年明けから1日も休まず、ジム通いを続けた。炎天下での朝9時からの猛練習が終わった夜、7時頃からの2部練習だ。だが限界を悟った8月は完全な弱気。「もう行くのやめようかな」とこぼすようになった。そんな時「ダメ!

 私も行くから」と一緒に体を動かし、励ましたのがマラソンランナーでもある夫人だった。

 体調管理も気遣った。バナナ、ココナッツ、グレープフルーツ、レモン、豆乳などをミックスし、美智子さん考案の「パワードリンク」が毎朝食卓に並ぶ。先発前夜の4日は夫のリクエスト「野菜たっぷりカレー」で必勝を願った。

 夫から今回の1軍昇格を聞いた時、思わず電話口で号泣したという。それにつられて「昌さんも泣いていた」そうだ。「今日の姿を見て安心しました。支えて下さったみなさま、本当にありがとうございました」。尊いウイニングボールを受け取ると、また涙があふれ出た。【松井清員】