プロ野球の頂点を決める「SMBC日本シリーズ2014」が今日25日、甲子園球場で開幕する。9年ぶりに出場する阪神はパ・リーグ王者のソフトバンクと激突する。和田豊監督(52)は24日に甲子園で開かれた監督会議で予告先発の提案を受け入れた。セ・リーグCSファイナルステージで、リーグ優勝した巨人に4連勝した勢いのまま、29年ぶりの日本一を目指す戦いに臨む。

 火花が散った。秋晴れの甲子園で、日本一決戦を翌日に控えた監督会議が行われた。ソフトバンク秋山監督に続き、阪神和田監督が入室する。ルール説明などが終わると、まずは秋山監督が問いかけた。

 秋山

 去年は予告先発やったんですよね?

 しますか?

 和田

 分かりました。やりましょう。

 秋山

 明日はスタンリッジで。

 和田

 うちはメッセンジャーです。

 52歳の同学年、やりとりは静かでも、同席の熊崎コミッショナーを感嘆させた真剣勝負。前哨戦から緊張感に包まれた。

 和田監督は「今朝の新聞に出てたからね、そういう考えなんだと。ここまで来たら分かっての方がファンの皆さんに喜んでもらえると思うし」と話した。この日の新聞報道などで「秋山監督が予告先発を拒否」という情報が入った。固定メンバーで戦ってきた相手に比べ、阪神は特に指名打者制で左右打者を使い分けられる。結論を任されると、すぐさま同意した。

 監督会議直前の会見で「予告なし」と言われると「後から決めるんでしょ?」と返した。敵が嫌がっているのならば、構わない。会議では水を向けられた形だが、急所を突きにいく腹づもりだったようだ。

 「短期決戦はいかに早く流れを引き寄せられるか、または引き戻すか。勢い、流れ。モメンタム(momentum)がポイントになる」

 ポストシーズン6戦負けなし。CSファイナルステージでは巨人を打ち崩した。第1戦は3点、第4戦は4点と初回に電光石火の攻撃で流れをつかんで連勝した。裏打ちのある攻守をもって勢いづく。「勢い」「弾み」という意味のモメンタムを用いながら、力を込めた。

 ドラフト会議に出席し、3日ぶりの練習だった。久しぶりのタテジマで「選手の顔を見てもアドレナリンというか、気合が入っていた。緊張しないといいゲームはできない」とうなずいた。29年も待っている日本の頂点へ。攻めダルマと化した和田監督のもと、決戦を戦い抜く。【近間康隆】<日本シリーズ予告先発>

 ◆98年横浜VS西武

 横浜権藤、西武東尾の投手出身の監督対決。東尾監督の「面白いことをやりましょう」との呼び掛けに、権藤監督も「私も同じことを考えている」と呼応。史上初の試みが実現した。シリーズは横浜が4勝2敗で日本一。

 ◆05年阪神VSロッテ

 シリーズ前の監督会議で、阪神岡田監督の「ファンも喜ぶでしょう」と提案。ロッテのバレンタイン監督も快諾。岡田監督は「不利やったら提案するわけないよ」と自信を見せたが、ロッテに4連敗で敗退した。

 ◆13年巨人VS楽天

 開幕前日の監督会議で、巨人原、楽天星野両監督が採用に合意。原監督は「胸と胸を突き合わせた勝負をする」と意気込んだのとは対照的に、星野監督は「素直に野球をやりたい」と淡々。楽天が4勝3敗で日本一となった。