落ちる帽子に反省した。京大初のプロ野球選手、ロッテのドラフト2位、田中英祐投手(22=京大)が1日、沖縄・石垣島キャンプ初日にブルペン入りした。立ち投げで12球、座った捕手には変化球も織り交ぜ39球の計51球を投げた。力強い球がいく一方で、投げ終わった際に帽子が7度も落ちた。新たな環境で、手応えと課題が明確となった。

 引力に逆らうことはできなかった。右腕を目いっぱい振り終わった田中だが、勢い余って頭もくるんと回った。傾いた頭上から、Mマークの帽子がずり落ちること7度。「良い時の方が落ちないんです」。キャンプ初ブルペンを終えると、冷静に振り返った。

 力が入って、頭がぶれるから帽子が落ちる。ブルペンに向かう前、伊東監督からは「力むな」と声をかけられた。だが、力が入らないわけにはいかなかった。監督だけじゃない。コーチ、評論家、30社80人の報道陣、ファンと大勢のギャラリーの視線を浴びた。「どうしても力んでしまって、(フォームの)ブレを感じました。そういうのをなくしていけばいい」と素直に反省した。

 実は、大学時代の方が帽子は「すごく落ちていた」という。「落ちるのが減ったので、進歩したんだと思います」。本人も自覚して、フォーム固めに取り組んでいる。今は投球の際、3つのチェックポイントがある。(1)右足1本で立った時の姿勢(2)股関節に乗せた体重が投げる最後まで前に乗りきるか(3)右腕に力を入れずに投げているか。「腕を振るよりも、振られている感じ」と表現する。この日もスッと右足で立った状態から、前に乗せようと体重移動を意識して腕を振ったが、帽子が落ちる頻度は高かった。力みが出て軸がブレた。

 もっとも、悪い点ばかりではない。伊東監督は「体の余計な動きを抑えないと。半分ぐらい、かみあっていない」と指摘しつつ、「描いていたイメージとちょっと違う。腕のしなやかさで投げるかと思ったら、意外とパワーピッチャー」と、指にかかった時の直球に目を見張った。田中本人は「50点です」と厳しい自己評価ながら、「今の方向性は間違っていないと思います」と自信も見せた。初詣の絵馬に書いた「日々成長」のごとく、足元を見失わずに進む。【古川真弥】