ロッテがドラフト2位指名で、巨人を熱望していたホンダ・長野(ちょうの)久義外野手(23=日大)を強行指名した。2年前の高校生ドラフトでもソフトバンクを熱望していた大嶺を指名して獲得にこぎつけた経緯がある。この日はドラフト会議終了と同時に都内の会場を飛び出し、長野の待つ埼玉県狭山市内のホンダ合宿所を訪れる誠意を見せたが、長野との対面はかなわなかった。2年ぶりボビーマジックで逆転獲得なるか。

 バレンタイン監督と長野の初対面はかなわなかった。午後7時25分。都内のドラフト会場から約1時半かけて到着した狭山市内のホンダ合宿所に、長野の姿はなかった。ドラフト当日に監督みずからあいさつに出向くのは、04年に再来日後初めて。最大級の誠意を示し、対応したホンダ・安藤監督に約10分間、熱い思いを伝えた。

 バレンタイン監督は「いかに我々が長野選手を大切に思っているか示したかった。『会いたい』と言ってくださればいつでも会いに来ます。長野選手が都内に来ることがあれば夕食をともにしたい」と押しの一手だった。

 予想外の展開から強行指名が実現した。当初、ロッテ編成担当のシミュレーションでは、長野が1位もしくは外れ1位で指名されると踏んでいた。だが、強行しても断られることを危惧(きぐ)した球団が次々と指名を見送り、ロッテ2位指名の6番目まで残る展開となった。うれしい誤算に思わず笑みがこぼれたバレンタイン監督。2位でちゅうちょなく指名し、見事に交渉権を獲得した。「こんな運びになるとは思わなかった。最高の結果」と大喜びだった。

 長野が巨人以外は残留をほのめかしていることについて、バレンタイン監督は「ドラフトというのは球団が選手を指名するもの。選手が球団を決めるものではない」と語気を強めた。ルールにのっとって交渉権を獲得したことを強調した。そして「彼はパワーがありながら広角に打てる打撃、強肩、優れた走塁もある素晴らしい選手。うちは若い選手を育て、ケアできる球団だ」とアピールした。

 だが今後、すぐに入団とはならない現状だ。瀬戸山球団社長は「これから誠意を持って話をしないといけない。巨人希望という情報は聞いているが、担当スカウトによると必ずしもそうでもないということも聞き、思い切って指名させてもらった」と話した。2年前の大嶺を獲得した“実績”があるだけに、粘り強い交渉で獲得にこぎつけるつもりだ。【鳥谷越直子】