プロボクシングで77年に始まったチャンピオンカーニバルが開幕した。13階級の日本王者の指名挑戦者シリーズ。08年からは最強後楽園トーナメント優勝者に挑戦権が与えられる。以前は大会場で複数タイトル戦という一大イベントの年もあった。
昨年まで1月開幕が、今年は大みそかの世界戦集中などから3月からとなった。第1弾のミドル級で波乱が起きた。東洋太平洋は5度、日本は4度防衛中だった2冠王者柴田が、2年前に判定勝ちした西田に3回TKO負けで陥落した。
4月28日に大トリで異色の強打者が日本王座に挑戦する。ウエルター級1位有川稔男(31)。最強後楽園決勝で、15連続KOの日本タイ記録を持つ元王者渡部と対戦。打撃戦をボディー攻撃で6回TKOで制し、MVPも獲得した。1月に王座決定戦を制した王者新藤の初防衛戦で、初めてタイトル挑戦する。
昔のプロボクサーは一獲千金目指したたたき上げが大半で、大卒だけで珍しかった。最近はアマ出身が増え、キャリアを積み、実績を作って大卒後に転向も増えた。東大卒もいるが、大成した選手はいない。有川は東大中退という経歴を持つ。
1浪して東大文科3類に入学した。周囲との違和感に「ここに自分の場所はない」と2年で中退した。読書が趣味でニーチェとか思想や哲学を好む、ボクサーにはいないタイプ。次に選んだのは陸上自衛隊レンジャー部隊で、これにも見事に合格した。
ここで運命の出会い。入隊までに体作りをしようと、実家近くの川島ジムに入門した。先輩の試合を見ていて「これだ」とひらめく。08年プロデビュー。右フック1発で1回17秒KO負けも極真空手や柔道経験もあり、17戦目で王座挑戦まで成長した。
12勝で10KOも強打者の悩みがある。12年の練習以来、右拳を5度骨折した。渡部戦でも中指が折れて手術し、2月に再建手術を受けた。技巧派の元世界王者の川島会長にとっては3人目で、のべ4度目の挑戦で初のベルトがかかる。「間に合うかが第一。ボクシングをまだ知らないが、今度こそ」と期待する。
清掃会社でアルバイトしている。高層ビルの窓ふきも仕事。「高いところが好きなんで」と笑う。入門時に最低日本王者を目標とした。その高みに立てるか。【河合香】

