業師の宇良(24=木瀬)が、十両3場所目で早くも幕内昇進に「王手」をかける地位まで上がってきた。新十両の夏場所から10勝、11勝と連続2桁勝利を挙げ、秋場所は東十両筆頭で臨む。非常に分かりやすい地位で、十両全28力士のトップ。勝ち越せば九州場所での幕内昇進が確実な番付だ。

 土俵上では「業師」として、多種多様な技を繰り出す宇良。相撲を終えて報道陣とあいまみえる際も、本人は決して意識はしてないだろうが「押し引き」がある。記者側が、威勢の良い返答を期待するような場面があるとしよう。例えば「十両で2場所連続2桁勝利を挙げ、自信がついたのではないか」という質問。こちら側は「そうですね。やっていけそうです」というような答えを頭に思い浮かべるのだが、宇良の答えは「たまたまじゃないですか。別にないです」「完全に力負けしますし、全然勝てる気がしない」と控えめで引き気味なのだ。

 そうかと思えば、幕下付け出しデビューを除いて史上最速となる所要9場所での新入幕昇進への記録について問われると「記録に残ったらうれしい」と反応良く、グイッと前に押すような答えがくる。

 残念ながら最速記録は逃したが、次の九州場所で昇進すれば所要10場所で史上2位になる。歴史に残る快記録だと思うが、本人は「(1位以外の)あとはいいかな。2番目は」と素っ気ない。

 まさに、押し引き自在だ。だからこそ、聞くこちら側も「これを聞けば、どういう答えが返ってくるだろうか?」と、毎回楽しみな面もある。ただ、心配なのは、小柄だけにケガや故障だ。名古屋では右足首を痛めてドキッとしたが、体を痛めて口が重くなることだけは避けてほしいと、切に願う。

 勝ち越せば幕内昇進を確実にできる秋場所。宇良の相撲から目を離せないのはもちろん、その言葉にもよく耳を傾けたい。【木村有三】