Bブロックで7戦全敗の本間朋晃(38)が、ついにG1初勝利を挙げた。メーンで石井智宏と対戦。大歓声の後押しを受け、何度も自爆したこけしを成功させ、悲願の初白星をもぎ取った。

 観客席のみんなが両手を突き上げていた。大歓声と本間コールの中、マイクを取った本間は、つぶれたのどから声を絞り出した。「勝ちました!」。喜びの叫びも、ほとんど聞き取れない。今度は客席からどっと笑い声が起きた。本間の初勝利が超満員の後楽園ホールを幸せで包んだ。

 昨年7月21日から始まったG1連敗の長く苦しい戦いが、387日で終わった。この日の石井戦も、ピンチの連続。こけしの自爆が続き、客席から何度もタメ息が漏れた。それでもあきらめなかった。石井の顔面へのこけしロケットで流れを変え、最後はコーナーからのこけしが成功。悲願の勝利をたぐり寄せた。

 高校時代まで運動経験がなく、プロレス界に飛び込んだ。試合中にラリアットのこぶしがのど元に当たり、翌朝目覚めたら声が出なくなっていた。プロレスをやめようと思ったことも。それでも、自分を少しでも強く見せようと、2日に1回2000円の日焼けサロンに通い、黒光りする体を維持してきた。

 こけしの失敗で、前頭部の髪の毛が薄くなり、育毛剤を通常の2倍塗ってケアしているという。そんな努力がようやく実を結んだ。「もう、最高にうれしいです。生涯忘れることのできない最高の1勝。今日は飲めない酒を飲んで、ゆっくり喜びにひたりたいと思います」。ただプロレスが好きだった男が、日本一の新日本の、最高の舞台でつかんだ1勝。それは、本間だけでなく、ファンをも幸せにする大きな1勝だった。【桝田朗】