「K-1 WGP 2015 THE CHAMPIONSHIP」(21日、東京・代々木第2体育館、日刊スポーツ新聞社後援)の65キロタイトルマッチで、王者ゲーオ・フェアテックスと対戦する挑戦者・木村”フィリップ”ミノルが、インタビューに応じた。

 -9・22後楽園での平本蓮戦は会場を大興奮させる一戦でした。あの試合は木村選手にとってどんな一戦でしたか?

 木村 僕のイメージでは自分のステップアップどうこうの試合ではなく、お客さんへの感謝を見せる試合というか、感謝祭のような感じでした。「今までありがとう」という気持ちを込めて「いい試合を見せます」という恩返しの感覚でしたね

 -平本選手も試合を盛り上げましたし、勝った木村選手も負けた平本選手もどちらも光った試合だったと思います。平本選手と拳を交えていかがでしたか?

 木村 強かったですね。彼と同世代の選手が勝てないのもそりゃそうだな、と。あの世代ではトップ……というか世代関係なくトップの選手ですね。

 -戦前の言葉通り、木村選手はほぼパンチのみで戦って、平本選手がパンチで来てもそれに応じて打ち合っていたように見えました

 木村 あれは僕だからこそですよね。リングの上でお互いに心を開いたから、いい試合になったと思います。自分のスタイルがあってこそ、お互い光るものだと思うので、やっていて楽しかったですね。

 -試合中にお互いに分かり合えている感じがあったのですか?

 木村 はい。そっちがそう来るなら、こっちもやってやるよって。僕たちリングでしゃべってましたからね、「もっと頑張ろうぜ!いい試合しようぜ!」って。

 -木村選手にとっては平本選手の挑戦を受けるという今までにないシチュエーションの試合でしたが、周囲の反応も今までとは違ったのではないですか?

 木村 そうですね。見ている人たちは分かってくれるもので、みんな感動していました。今までの「よくやった」という感想ではなく「難しい試合をよく正解の方に導いて、いい盛り上げ方を出来てすごいよね」と、たくさんの人に言ってもらえて。だから見ている人たちは、試合のストーリーや見方を分かっているんですよね。今のファンは目が肥えていると思います。僕らが大々的に「こういうストーリーで、こういう試合なんだよ」と言わなくても、ファンがそれを感じ取ってくれるようになったので、やっていて楽しかったです。

 -それはまさに新生K-1ならではのストーリーと盛り上がり方ですね

 木村 ボクシングでもMMAでも、例えばUFCでも、僕と平本選手みたいな試合で、あそこまで見ている人に伝わらないと思うんですよ。挑む立場と迎え撃つ立場があって…というのは。あの試合は本当にK-1ならではのストーリーで、K-1にしかない仕組みだったと思います。ただちょっと焦ったのは、僕もまだ22歳なのに、17歳を迎え撃つことになったから、まだ俺にも上があるのにベテラン感を出すのはまだ早いよって(笑)。

 -確かにそうでしたね(笑)。さて木村選手にとっては目まぐるしい1年を締めくくる試合としてK-1 WGP 65キロのタイトルマッチ、王者ゲーオ・フェアテックスが持つベルトへの挑戦が決まりました

 木村 今回のゲーオは僕が勝った時(1・18代々木)のゲーオとは全然違うと思うし、初めてゲーオという選手と戦うつもりです。感覚としては前に1度、タイ人と戦ったことがあるから、それを参考にゲーオと戦おう、みたいな感じですね。

 -1度勝った相手と戦うというよりも、初めて戦うという感覚なのですね

 木村 もちろんいいイメージは残しています。俺は1度こいつを倒しているんだという自信は残して、それ以外はもう別人のつもりです。

 -ゲーオは7・4代々木大会での左右田泰臣戦で、圧倒的な強さで左右田選手に勝利しました。あらためてゲーオ強しの印象を残していますが、木村選手はあの1戦をどう見ていますか?

 木村 ゲーオは昨年11月の初代王座決定トーナメント決勝で左右田選手とやっていて、ゲーオが疲れていたかもしれないけど、試合展開そのものは11月も7月も同じなんですよ。左右田選手をいなしてポンポン当てて攻撃を当てるっていう。それがお互いに万全の状態で戦ったから、7月はああなっただけなんです。みんなは俺とやった時にゲーオは調子が悪くて、7月に左右田選手とやった時に急に化けてまた強くなってきたと思うかもしれないけど、ファイターから見れば、11月も7月もゲーオがやっていることは同じなんですよね。度合いが違うだけで。それで1月に俺とゲーオがやって、俺が勝っているわけだから、ゲーオは俺に苦手意識があるだろうし、ゲーオにとって俺はやりにくい相手だと思います。

 僕の見解では、ゲーオは背が高い相手が得意だと思うんですよ。トーナメントで勝った相手も山崎(秀晃)選手、久保選手、左右田選手と、65キロでは比較的みんな背が高い選手じゃないですか。俺は背が高い方じゃなくて、その俺につまずいているわけだから、きっとゲーオは俺みたいなタイプを苦手にしていると思います。まあ…でも再戦でベルトがかかったタイ人は強いですけどね。

 -ゲーオは「1月の試合で負けたとは思っていない」や「木村は実力に伴わない口の悪さがある」と発言していますが、それについてはいかがですか?

 木村 それでいいと思いますよ。でもそういう選手は次で勝てない。今まで格闘技を見て来て、格闘技のジンクスじゃないけど、ギリギリ勝った方と負けた方がいて、その2人が再戦するとギリギリ勝った方が圧勝するんですよ。これは格闘技で何回もあることなんです。それはきっと「負けてないのに負けにされた」と思って過ごす日々と「勝ったけど負けていたかもしれない」と思って過ごす日々では、成長の度合いに差が出るからだと思います。だから今までのキャリアではゲーオの方が上かもしれないけど、今回は俺の方が上だと思って戦います。

 -木村選手もゲーオに勝った後、4月にHIROYA選手、7月にマサロ・グランダー、9月に平本選手に勝って、密度の濃い時間を過ごしてきたわけですからね。これから試合までの時間をどう過ごそうと思っていますか?

 木村 試合が決まってからずっと緊張感が残っていて、まだ試合まで1カ月以上あるのに、夢にゲーオが出てくることもあります。だから練習を終えた時には自信しか残っていないように仕上げなきゃいけない。でもいい準備は出来ているし、僕も新しい戦い方で、いい試合が出来ると思います。いい試合をすることが目的ではないですけど、ベルトを取るために最高の試合が出来るでしょうね。

 -木村選手はこれまであと1歩のところでベルトを取ることが出来ず、先日の会見でも「ここでベルトが取れるかどうかは人生のチャレンジ」と話していました。その気持ちは今も同じですか?

 木村 そうですね。その壁はすごく高かったので、ゲーオ戦がそれを乗り越える時だと思えば、しかもK-1の世界チャンピオンという夢がかなう時だと思えば、こんなに楽しみなことはないんでワクワクします。11月21日は自信だけを持ってリングに立つつもりです。

 -今まで感じてきた悔しさはすべて今回のタイトルマッチでベルトを巻くためだった、と

 木村 初めて巻くベルトがK-1のベルトということには特別な思いがあって、僕にも執念はあるし、ゲーオにも執念はあると思うんでワクワクします。

 -木村選手自身、K-1や格闘技に救われた人生だったわけですよね?

 木村 はい。K-1がなかったらこうやって夢も見ていないし、K-1があったからこそ格闘技を始めたと思います。自分の人生を創るうえでK-1のベルトは取らなきゃいけないし、K-1のベルトをここで取ってこそ完璧な人生になると思います。

 -例えばもしK-1がなかったら、今もまだ地元にいて普通に就職して暮らしていたと思いますか?

 木村 そう思いますね、めっちゃ格闘技は好きでしょうけど(笑)。でもK-1に出会っていなかったら絶対にそういう人生を送っていたと思います。

 -たくさんの人たちがこの試合を楽しみにしていると思います。木村選手はどんな試合を見せたいと思っていますか?

 木村 11月に代々木第2に来た人は、間違いなく毎回K-1を見に来るような気持ちだと思うんですよ。今のK-1は他の格闘技以上にストーリー性があって、絶対に続きが見たくなると思うんで。そして俺が思っている以上に、ファンのみんなはいろんな想いを持って試合を見に来ると思うので、俺もゲーオもファンも気持ちが最高に高まった状態で、最高の作品を創ることが出来ると思います。ゲーオの人生から見ても、俺にリベンジして防衛することはすごいことだろうし、俺の人生から見ても、ずっとベルトを取れなかった選手が最強のチャンピオンに2回勝ってK-1のベルトを取ることはすごい物語です。みんなの最高の気持ちがリングに集中すると思うので、それが爆発するんじゃないですかね。俺はその瞬間が楽しみです。

 ◆木村“フィリップ”ミノル(きむら・ふぃりっぷ・みのる) 1993年9月9日、ブラジル生まれ。25戦20勝(15KO)4敗1分。172センチ、Fighting Kairos/マイウェイジム所属。

 その他の対戦カードなど問い合わせは、実行委員会=03・6450・5470、http://www.k-1wg.comへ。