元世界2階級王者長谷川穂積(35=真正)が「最後のチャンス」をつかむ。9月16日に3階級制覇を懸けてWBC世界スーパーバンタム級王者ウーゴ・ルイス(29=メキシコ)に挑戦することが6日、発表された。世界戦2連敗中の長谷川は、今回が「ラストチャレンジ」と明言。不屈の魂で、35歳9カ月での日本人最年長世界王座奪取を狙う。11度目防衛を狙うWBC世界バンタム級王者山中慎介(33)とのダブル世界戦となる。

 気負いや重圧は、なかった。2年5カ月ぶりに決まった日本人最多16度目の世界戦。長谷川は笑みを交えながら、集大成になる一戦への決意を込めた。

 「今まで、いいも悪いもたくさん試合をしてきた。次がラストチャレンジと思っている。悔いのない試合をしたい。最後、笑って終われるようなボクシングをしたい」

 打ち合いに挑んでTKO負けを喫した14年4月のマルティネス戦の前も「負ければ引退」を公言していた。だが「今、やめたら死ぬ時に後悔する」として現役続行。再起戦2連勝で迎えた今回も背水の陣には違いないが、心の中には微妙な変化がある。「前回は世界戦をすることが目標だったけど、今回は世界チャンピオンにならないと自分の中では終われないと思っている。死に場所が見つかって良かったと言う人もいるけど、違う。生き(る)場所が見つかったんです」。ラストチャンスは捨て身ではない。結果にこだわる。

 年齢を重ねたことで、新たな記録への挑戦権も得た。35歳9カ月になる次戦で勝てば、日本人最年長世界王座奪取となる。「疲れやすくなった」と言うが、先月末からの沖縄合宿ではWBCバンタム級王者山中との走り込み対決で全勝。「練習メニューは若いころと同じ」と山下会長も“若さ”に太鼓判を押す。「年のせいにしたくない。若かったら勝ってたのに、と言われたくない」と長谷川。加齢への反発心も原動力だ。

 相手のルイスはKO率82%を誇るが、経験豊富なレジェンドは「何も思わない」と泰然自若だ。長谷川家では世界戦勝利時のみ家族がリングに上がれるルールがある。「昔は抱っこしていた息子が中2になって、ボクより大きくなった。息子に抱っこしてもらうのが夢です」。170センチを超えた長男大翔(ひろと)君(13)との勝利の儀式実現へ、長谷川が最後の気力を振り絞る。【木村有三】

 ◆最年長世界王座奪取 日本人男子では元WBCフェザー級王者越本隆志の35歳0カ月が最年長。女子では44歳7カ月でWBOアトム級王者になった池山直が最年長。世界記録は48歳2カ月で、IBFライトヘビー級王座獲得時のバーナード・ホプキンス(米国)。6月3日に死去したムハマド・アリ氏は、36歳6カ月でWBAヘビー級王座を奪回している。