WBC世界バンタム級王者山中慎介(33=帝拳)が、2人の王者から金言を授かった。ボクシングの16日のダブル世界戦(エディオンアリーナ大阪)の予備検診が13日、東京都内などで行われた。山中は、4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス、同じ興行で3階級制覇に挑む長谷川穂積(35=真正)からの助言を胸に11度目の防衛戦に臨む。

 検診を終えた山中に、パナマの記者から挑発的な質問が飛んだ。「前回の試合、パナマ国民はモレノが勝っていたと思っている。今回、何か特別な作戦は用意しているのか」。1年前のV9戦でモレノのディフェンスに苦しめられた山中は、やや口調を強めて答えた。「あと数発パンチを当てるだけ。良い報告はパナマには届かないと思う。覚悟しておいて下さい」。

 自信の表情の裏には、練習での手応えと同時に、特別な2人からの「金言」がある。1人は10日に4階級制覇を果たしたゴンサレス。帝拳ジムがプロモートを務めている関係で、6月末に“直接指導”を受けた。ミットを構える最強王者から伝えられたのは、防御の意識と攻防の連続性だ。

 「頭を常に動かす。打ち終わったらガードを上げる。よけたらすぐに打つ-」。必死にアドバイスに耳を傾けた山中にとって、大きな収穫となった。「モレノは単発では崩せない。ディフェンスの重要性とともに、よけたら打つという意識が攻略につながると思う」とイメージを膨らませた。

 もう1人は長谷川だ。7月、沖縄での合同キャンプ中に声をかけられた。「ここをクリアすれば具志堅さん(13度防衛)を超えられると思うし、超えて欲しい」。V10で防衛が途絶えた2階級王者は、若手時代からの憧れの存在。記録に興味を示さない山中にとっても、その言葉は胸に響いた。日本歴代2位に並ぶV11に向け「同じWBCバンタム級王者だし、自分にとって特別な人。すごくモチベーションになった」と力を込めた。

 試合が近づき、その長谷川には「2人で勝って、笑って会いましょう」とメッセージを送った。過去最多140回のスパーリングで勝利のイメージは固まった。「やれることはやった。自信満々です」。手応え十分に、決戦の地・大阪に入った。【奥山将志】

 ◆日本ジム所属選手とパナマ人による世界戦 初めて行われたのは1969年(昭44)4月の小林弘が15回判定勝ちしたアントニオ・アマヤ戦。その後、ガッツ石松、大場政夫、柴田国明、渡辺二郎らも対戦した。8月の河野-コンセプシオン戦まで通算36戦行われ、日本の19勝16敗1分け。日本では具志堅が1人で4勝、パナマもイラリオ・サパタが5勝を挙げている。