IBF世界ライトフライ級王者八重樫東(33=大橋)が左肩完治を示すV2に成功した。同級8位サマートレック・ゴーキャットジム(タイ)を圧倒し、最終回に連打でレフェリーストップの12回2分13秒TKO勝ち。4月に左肩を痛めて8カ月ぶりの試合も、腕立て伏せなど大相撲の横綱千代の富士流トレーニングの成果を発揮した。V3戦は来年3月にも暫定王者の同級1位ミラン・メリンド(フィリピン)と指名試合となる。

 八重樫は最後の最後に仕留めた。大橋会長から8回には「プロなんだから倒せ」とゴーサイン。「中途半端で攻めあぐねた」が、最終12回にコーナーへ追い詰めての連打にレフェリーストップ。「最後は力業のごり押しも倒せてよかった」と、珍しく傷のない顔でホッとした表情を見せた。

 V1戦の3週間前の4月に左肩を痛めた。関節唇と肩甲下の筋損傷。左はジャブだけで2-1の判定で防衛したが、7月になっても痛みが引かず1試合回避。医師には手術を勧められたが、復帰まで最低1年とも言われた。手術は拒んだが引退もよぎった。効果があると聞いた治療はすべて試し、おはらいにも行った。

 そんな時に肩の脱臼癖があった千代の富士が頭に浮かんだ。軽量もウルフと呼ばれた筋骨隆々の肉体は、腕立て伏せ1日1000回などで作り上げた。八重樫も「筋肉のよろいを着けるように、周りの筋肉を大きくして固めよう」と考えた。

 昨年からフィジカルトレーニングの指導を受ける和田良覚氏との意見も一致した。腕立て伏せ、逆立ち、懸垂など、器具は使わずに自分の体重を使った自重筋トレ。9月には痛みが和らぎ、10月にはパンチを打てるようになった。試合後も「まったく問題なく振れた」と、あの苦しみを完全に乗り越えた。

 激闘王と呼ばれるが、序盤から本来のフットワーク、スピード、テクニックで圧倒した。「動くことはできたがそこから落とせなかった」と反省。次は90日以内という暫定王者メリンドとの統一戦が待つ。「ケガもなく、次はもう少しいい試合を」と意欲満々だ。

 王座を守って年越しを果たした。「先輩の王座返り咲きにつなげられた。少しは刺激になってくれれば」。今日31日に世界王座奪還に挑む、同じ拓大出身の内山への後押しになることを願った。【河合香】