ボクシングの東洋太平洋フライ級王者比嘉大吾(21=白井・具志堅スポーツ)が4日、東京・後楽園ホールで「世界前哨戦」と位置付けたノンタイトル10回戦を4回2分29秒TKOで制し、デビューから12連続KO勝利を飾った。防御を固めるディオネル・ディオコス(フィリピン)を連打で圧倒。具志堅用高会長(61)と同じ21歳での世界王座奪取へ、次戦はいよいよ世界戦が待つ。

 ヒートアップするファンの声援と正反対の暗い比嘉の声だった。「だらしない試合してすいません…」。終始圧倒し、最後は左ボディーでの4回TKO勝ちにも「練習の成果が全然出せなくて」。うなだれながらの勝利者インタビューは迫る世界戦を意識するからだろう。「でも、この経験をしておいて良かった」。その反省こそが何よりの収穫になった。

 至近距離で上下に滑らかにつなげる得意の連打もあったが、クリンチに逃げられる場面もあった。「世界王者なら、ほどいてバックステップで攻め続けるはず」。KO狙いに右を多用したのも「もっと左(ジャブ)からですよね…」と辛い。「これが世界戦なら…」。常にその頭があった。

 郷里の期待に応える使命感ゆえの高い理想だ。例えば、同じ沖縄出身の元世界王者浜田剛史氏に「辞めたら遊べる。今は集中しなさい」と助言されたのは2年前。休日は遠出もした私生活をすぐに見直し、「今は休日は体の回復に努めている」とストイック。沖縄の絆に感謝は尽きない。

 WBC同級3位で、1、2位による3月の王座決定戦の勝者への挑戦を見込む。沖縄県生まれの世界王者(暫定のぞく)は92年の平仲が最後。22歳の誕生日の8月9日までに四半世紀ぶりの快挙へ。「絶対に取りたい」。世界の頂は目の前にある。【阿部健吾】