史上4位の所要7場所で新十両に昇進した宇良(23=木瀬)が、うれしい初白星を挙げた。元幕内で西十両12枚目の鏡桜(28)を一方的に押し出した。学生時代に得意とした奇手・居反りが注目されるが、4歳から始めた相撲で磨いてきた原点の「押し」で記念星を奪取。超個性派の新星が、関取としての1歩を踏み出した。

 記念の関取初白星は、根性の「押し」でつかんだ。宇良は低い立ち合いから、鏡桜を突き上げた。技を警戒して足が止まった相手を、一気に押し出した。ピンク色の締め込みをつけた新星へ、拍手が鳴りやまない。「良かったです。勝てて良かった」。土俵下では力水をつける位置が分からず、戸惑った。初々しく、関取のスタートを切った。

 強豪校ではない関学大で、奇手・居反りが得意で注目された。小柄な体で大きな相手の懐に潜り込むスタイルは、幼少時に習ったレスリングをほうふつさせ、アマ時代から観客の興味を引いてきた。昨年3月の初土俵後、居反りこそ出ていないが、低い体勢の足取りなどで惑わせ、史上4位の所要7場所で新十両昇進。まだ大銀杏(おおいちょう)も結えないちょんまげ姿がスピード出世の証しだ。

 そんな業師も、原点は「押し」だった。4歳から指導した元幕下立花の菊池弘至氏(56)は「基本は、押ししか教えてない」という。同氏とのぶつかり稽古は小学生らにとって脅威。「根性というより恐怖です。押すなんて不可能。稽古前から泣きだす子もいた」と宇良。珍手より先に培った根性の「押し」。角界での最多決まり手も押し出しで、この日で8度目だった。

 64キロまで絞って体重別大会に出場していた関学大2年時から、4年で体重は倍増した。ボディービルダーを参考に胸、足、背中の筋肉を鍛え、卒業前にはベンチプレス160キロを記録。白飯にスクランブルエッグをかけ、食事代を抑えてタンパク源も補給した。「近道がしたかった。強くなるための」。プロ転向後も努力を続け、小柄ながらも173センチ、127キロまで達した。

 会心の内容で関取初白星を飾っても、浮かれることはない。「常に平常心。一喜一憂しないように。また同じ気持ちでいくだけです」。技だけでなく、強い心も兼ね備えた宇良の進撃はこれからだ。【木村有三】

<宇良和輝(うら・かずき)アラカルト>

 ◆生まれ 1992年(平4)6月22日、大阪・寝屋川市。

 ◆相撲歴 4歳でわんぱく相撲に参加。体操のほか小3から中3までレスリングにも取り組み、飛行機投げを原型に得意技「居反り」を身に付ける。京都・鳥羽高、関学大では相撲部。11年全国学生個人体重別選手権65キロ未満級優勝。

 ◆アクロバット 13年10月、ロシアで開催された武術と格闘技の世界大会の相撲(85キロ未満)で優勝。バック宙もできる身体能力を持ち、学生時代にテレビ朝日系「マツコ&有吉の怒り新党」の新三大○○調査会でも取り上げられた。

 ◆スピード出世 15年2月に木瀬部屋へ入門、関学大出身では初の角界入り。同春場所で初土俵、先場所までの通算成績は38勝4敗。史上4位の所要7場所(年6場所制の58年以降初土俵で、幕下付け出しを除く)で新十両に昇進。

 ◆先輩 お笑い芸人のピース・又吉直樹は、寝屋川五中の12期先輩

 ◆締め込み 淡いピンク。宇良も母も好みの色。

 ◆サイズ 173センチ、127キロ。