大関とりに挑む関脇高安(27=田子ノ浦)が、自分を厳しく追い込んだ。5日、都内の時津風部屋で2日連続の出稽古。正代、豊山と連続20番の三番稽古ラスト5番を待ったなしで締めた。同部屋の横綱稀勢の里が春場所で左上腕部などを痛めたこともあり、十分な稽古ができないとあって、夏場所(14日初日、東京・両国国技館)まで、工夫して“稀勢の里ロス”を埋める。

 稽古の終盤に、高安のピッチが上がった。正代と5番、続けて豊山と15番に及んだ合計20番の三番稽古。すでに10番を終えた豊山はへばっていたが、勝負がつくとせかすように立ち合いを求め、最後の5番を矢継ぎ早に取った。まさに待ったなし。20番取って18勝2敗だった。

 「(自分の)息が上がるようにと思って。(厳しい稽古で知られた)鳴戸部屋時代を思い出してね」。息も絶え絶えの豊山と対照的に、高安の息は軽く乱れただけ。「(他の申し合いを含めて)23番ですか? 思ったより少なかった。30番以上は取りたかったけど…。小柳(豊山)もだいぶへばっていたから」と物足りなさそうだった。

 いつもは同部屋の横綱稀勢の里が極上の稽古相手になってくれる。例えば20番取ったとしたら「(他の力士と)全然違います」という。今はそんな兄弟子の体調が万全でなく、十分に相手をしてもらえない。「だから、それに近い稽古をしなきゃいけない」と考えた末に出稽古に出向いた。

 夏場所まで、10日を切った。今後はさらに自分を追い込むため、格上力士を求めて出稽古を重ねるつもりだ。「横綱、大関のいる部屋に行った方がいい。自分はもっとかわいがられた方がいい」。横綱白鵬が、自分に興味を持っていることを伝え聞くと「本当ですか? ありがたいです」と目を輝かせた。世間はゴールデンウイーク(GW)。「大事な大事な時間。GWですよ。ゴールデンの意味が違うけど」と言って、軽く笑った。【加藤裕一】