今年の米アカデミー賞で8部門を制した英映画「スラムドッグ$ミリオネア」で人気者になったインドのスラム出身の女児ルビナ・アリ(9)の家族が、アラブの富豪になりすました新聞記者に20万ポンド(約2900万円)で養子縁組を持ちかけた。おとり取材を仕掛けた英大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドが、19日付で報じている。

 映画の舞台はインドで、孤児だった青年の半生を描いている。ルビナは青年の初恋相手であるヒロインの子ども時代を演じた。ルビナの家庭の生活費は1日に1ポンド(約140円)。貧困につけ込んだおとり取材に異論も出そうだ。

 同紙によるとインドのムンバイのスラムで、下水の流れ込む家に住むルビナの父親は「私と家族、そして娘の将来に最善の方法を考えなければならない」として、娘の養子縁組に応じる対価として20万ポンドを要求した。また、「私たちは映画から、何も得ていない」とも話している。ルビナのおじも「この子は普通の子ではない。オスカーを獲得した(映画に出た)子だ」と主張して、当初の4倍に値をつり上げた。

 インドのヒンドゥスタン・タイムズによると、おとり取材だったことが分かると、父親は「ルビナを売るつもりはない」と養子縁組を否定したという。

 映画は世界中でヒット、100億円近いの興行収入を得ていることから「スカウトした子どもを低賃金で使い、搾取した」と抗議が寄せられていた。

 一方でダニー・ボイル監督は映画出演によりルビナさんは主人公の少年時代を演じた子役とともに、学校に通えるようになったエピソードをパンフレットなどで明かしている。