広末涼子(29)が27日、作家松本清張氏原作の主演映画「ゼロの焦点」(犬童一心監督、11月14日公開)のフィルムを、福岡・北九州市小倉にある松本清張記念館に贈呈し、感謝の思いを強めた。清張氏出身地に建つ同館にはゆかり深い品々が展示されており、セレモニーは、著書700冊の表紙を飾ったパネルと、静かにほほ笑む清張氏の巨大な写真ボードに囲まれた会場で行われた。映画は今月完成したばかり。広末は「(清張氏に)これから通信簿を渡されるような気持ちです」と話した。

 同映画は清張氏の生誕100周年を記念して製作。初挑戦となる殺人事件を扱うミステリー映画に偉大な作家の代表作という重さも加わって撮影前は「大きさに不安を感じました」。戦後が色濃くにおう昭和30年代という時代が生み出した悲劇。台本を読んで「感じたことのないつらさや精神的な疲労感が残りました」といい、時代設定や役柄を体に染み込ませるのも一苦労だった。

 清張作品は、時代背景が生み出す重厚さや巧みな心理描写で知られ、映画化された作品では、岩下志麻や倍賞千恵子、松坂慶子、桃井かおり、田中裕子、山口百恵ら多くの出演女優にとって、演技の幅を広げるターニングポイントになってきた。3カ月という異例の長期撮影で難役と向き合った広末は「今は充実感でいっぱいです」という。10代で国民的アイドルになった広末も、来年は30代を迎える。清張氏に対して「もちろんお会いしたことはないのですが、恩師のように感じます」と言い、「今は『ありがとうございます』と伝えたい」と感謝の気持ちをあふれさせた。