男役スター真風涼帆は10年の節目に星組から宙組へ組替え。異動2作目でトップ朝夏まなとと組み、会話劇の要素もある「メランコリック・ジゴロ」で全国15カ所をツアー中だ。熊本育ちの真風と佐賀出身の朝夏はまさに「九州コンビ」。九州ネタでも親交を深め、トップを近くで支えていく。ショーは宙組誕生時に初演された「シトラスの風3」。

 在位6年を超えた星組前トップ柚希礼音を、紅ゆずるらとともに支えてきた真風。5月に柚希サヨナラ公演を終え、宙組へ移り、翌月には、宙組新トップ朝夏のお披露目公演に出演。2番手として組を、朝夏をサポートする立場になった。

 「サヨナラから、お披露目。訳が分からない状況で、忙しさに助けられました。もともと、ズルズル引きずる性格ではないし」

 熊本生まれ。“九州男児”らしく豪快に笑う。

 「朝夏さんも九州(佐賀)。『九州だもんね』みたいな絆はあります。朝夏さんはナチュラル。下級生まで気にかけてくださる」

 前作「王家に捧ぐ歌」では、役柄上、朝夏とのからみは少なかったが、今作では、やんちゃで悪事を働く陽気な青年コンビを、朝夏とがっぷり組んで演じる。

 「過去の作品をDVDでは見ましたが、あまりとらわれすぎないように」

 1920年代の欧州が舞台。芝居は陽気なジゴロたちのセリフの掛け合いが鍵を握る。93年の初演以来、再演が重ねられる。

 「2人のやりとりを、実際に楽しめるように。セリフが肉体化されていないとダメ」。けいこ場では、普段以上に集中した。「若者ならではの悪知恵などは、理解しにくいことはないですよね」。青春劇でもあり、共感する部分も多い。

 「普段も私、よくしゃべる(笑い)。学生時代から、友達としゃべることがストレス発散でした。もともと私、ストレートプレーを見るのが好きで。最近も、中井貴一さんの舞台を見たので、ちょっと参考にしながらやっています」

 一人前のメドが「男役10年」。その節目に、初の組替えを経験した。

 「宙組1年生。いいチャンスをいただけた。今は宝塚人生の1日、1日がいとおしく、大切。男役って、ここにしかない。かみしめたいと思います」

 男役としてのこだわりも日増しに強くなる。2年前、劇団理事の専科・轟悠と「南太平洋」で共演。多くの財産を得た。

 「背が高ければ、それだけで格好よく見えるわけではない。どう長所として見せるか。姿勢、ズボンの丈、バランス、髪形や化粧、すべて研究しないと。轟さんは、どの角度から見ても完璧。着こなし、足の運び、目の使い方もすべてが」

 男役道を究める轟から、高い美意識、立ち居振る舞いを学んだ。この10年「お手本」に恵まれてきた。

 「厳しい星組で、新人公演の濃い時間を過ごさせてもらえ、ボーッとしがちな私にはありがたかった」

 最も体育会系気質が強いとされる星組で鍛えられ、トップ就任後も進化し続けた柚希の背中も見てきた。

 「轟さんも、柚希さんも(努力を)…。苦しいことも、自分の力になった。今度は宙組で、私が下級生に伝えたい。見られても恥ずかしくない背中で」。男役10年。引っ張る自覚も強まっている。【村上久美子】

 ◆サスペンス・コメディー「メランコリック・ジゴロ」-あぶない相続人-(作・演出=正塚晴彦氏) 1920年代の欧州を舞台に、若者たちが一獲千金をたくらむ夢物語。陽気なジゴロたちの青春劇の要素もあり、笑いも交えたミュージカル。93年花組、安寿ミラ主演で初演。08年、10年にも、花組の真飛聖主演で再演。

 ◆ロマンチック・レビュー「シトラスの風3」(作・演出=岡田敬二氏) 98年、宙組誕生時に「シトラスの風」として上演。100周年の昨年、前トップ凰稀かなめ率いる宙組でも再演されている。今回も「飛翔」「誕生」と、新時代への飛躍をテーマに描く。

 ツアーは10日の大阪・梅田芸術劇場ですでに開幕。11月8日の北海道・ニトリ文化ホールまで全国15カ所。

 ☆真風涼帆(まかぜ・すずほ)7月18日、熊本県生まれ。06年「NEVER SAY GOODBYE」で初舞台。星組に配属。09年2月「My dear New Orleans」で新人公演初主演。11年8月「ランスロット」でバウ初主演。13年10月、外部劇場で「日のあたる方(ほう)へ」主演。今年5月、宙組へ組替え。身長175センチ。愛称「ゆりか」。