雪組人気スター、彩風咲奈(あやかぜ・さきな)は今年、入団10年目を迎えた。出身中学に自らの本が置いてあるのを見て発奮。節目の年に男役としての磨きをかけている。兵庫・宝塚大劇場での雪組公演「私立探偵ケイレブ・ハント」「Greatest HITS!」を7日に終えた。芝居では主人公の仲間の探偵役を好演した。東京宝塚劇場公演は25日から開幕する。

 顔つきも体つきもシャープになり、足長スタイルがより、映えるように。色紙に「男役10年、ここからがスタート」と書き込んだ。

 「歩く、しゃべる、立つ。常に男役らしくって考えていたんですけど、10年やって、無意識で男らしく立っていられるように」

 男役は一人前に10年かかるとされる。前回の本拠地作「るろうに剣心」では斎藤一役。言葉少なに、たたずまいで情感を伝えた。

 「アクションを起こせない。何もしない男の格好よさを、ひたすら研究。動かなくても、大丈夫だっていう経験が大きかった」

 雪組は早霧せいなのトップ体制で、本拠地4作目になる。彩風は早霧、望海風斗と同じ探偵役だ。

 「3人のうち一番若くて、フットワークが軽い。でも、一番ひょうひょうとしていて、早霧さんは暴走型。望海さんがわりとボケ担当で、私はつっこみです」

 芝居巧者の先輩2人と一緒に物語を動かす。作、演出の正塚晴彦氏によると、3人の個々の性格に合わせたあて書き(俳優を事前に決めて脚本を書くこと)だった。

 「思ったことをズバッと言う、切り替えが早く、怒ってもすぐ終わる。単純さは似ている。朝起きてカーテン開けて、いい天気ならご機嫌ですし、私」

 実際、先輩2人からは彩風自身、学ぶことが多い。

 「ちぎさん(早霧)は惜しみなく、心でぶつかってきてくださる。本当にかっこいい方なんですけど、そのちぎさんが、おけいこ段階で未完成な部分もすべて見せてくださる。何も隠さず、完璧な男を仕上げていく過程を見せてくださる。部活の運動部の部長みたいな感じです(笑い)」

 抜群の歌唱力を誇る望海からは、歌への意識の持ち方を吸収した。今作も望海とのデュエットがある。

 「望海さんらに囲まれてソロや、デュエットをさせてもらい、頭を打った。もっと緻密に歌うべき。今まで、ただうまく歌おうとしていただけだった」

 個性豊かな先輩に恵まれ、目覚めた部分もある。

 「自分で自分のいいところを見つけないと。私は、自分自身が個性を殺していた。ちぎさん、望海さんを見て、自分は何で行くのかを見つけなきゃいけない」

 7年目までの新人公演で5回主演を務めた。元雪組トップ音月桂、レジェンドと呼ばれた前星組トップ柚希礼音に並ぶ回数だ。以前は重圧に感じたというが「胸を張らないと、5回主演に失礼と思う」と話す。

 本拠地作ポスターにも写真が載る立場にもなった。

 「(実家の)愛媛に帰って、出身の中学校に行くと、図書室に私の本を置いてくださっていて、校長室には音楽学校を卒業した時に送ったはがきが飾られていた。なんと温かい地から送り出してもらったんだろうと、パワーになりました」

 目覚めた大器が故郷でリフレッシュし、エネルギーも満タン。スター街道を猛進する。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・ロマン「私立探偵ケイレブ・ハント」(作・演出=正塚晴彦氏)舞台は20世紀半ばの米・ロサンゼルス。探偵事務所のケイレブ(早霧)ジム(望海)カズノ(彩風)らは、セレブたちの浮気調査などに奔走していた。そんな折、娘の捜索を依頼した夫婦が事故死。ケイレブを中心に、3人は事件を追う。粋で都会的な物語。

 ◆ショーグルーヴ「Greatest HITS!」(作・演出=稲葉太地氏)著名曲や名曲をもとに構成。クリスマスソングの場面では、早霧ふんするサンタクロースが登場。

 ☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛県大洲市生まれ。07年入団。3年目で「ソルフェリーノの夜明け」新人公演に初主演。3作連続含み、通算5回の新人公演主演は00年以降では柚希礼音、音月桂に続き3人目。14年にバウ単独初主演。昨年1月「ルパン三世」では次元大介、今年2月「るろうに剣心」では斎藤一を好演。身長173センチ。愛称「さき」。