2014年度を対象にした「第18回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」助演男優賞は、今年1月期のフジテレビ系「銭の戦争」に出演した渡部篤郎(47)が受賞した。主人公と20億円の現ナマをめぐって攻防を繰り広げるヤミ金融経営者・赤松をノリノリで演じきった。

 1万円札にアイロンをかけ、そのにおいをいとおしそうに嗅ぐ。金を愛し、金に溺れるヤミ金業者・赤松の陰を渡部はコミカルに、そしてシニカルに演じた。「台本に、あのキャラクターがしっかりと書かれていたので、まず、ちゃんと形にすることを考えました。『絶対楽しいものをお届けしよう』という意識。僕は何でも、楽しくやりますから」。

 暴力団を介入させ、拉致監禁も辞さないヤミ金業者だが、こわもてではない。カラフルなセーターを着込んで、オネェっぽく名前を「ちゃん付け」で呼び、表情もオーバーに作った。「無意識ですよね。気分でやってますから。皆さんが何をやるのかを現場で見て、そこに自分に合わせていっただけ。そこで声を出したり演じたりしてみると、どんどん、どんどん、花咲いてくれるというかね」。

 5日に47歳の誕生日を迎えた。ベテランの年齢に差しかかってきた。「もう長くやってますんで、何をやっても大変とは思わない。その辺は淡々と…。次に何が来るか分からない。そこだと思うんですよね、俳優って。使っていただけなけりゃダメですし。どうやって俳優としてのテンションを保っていけるか、ということを考えているだけです。その繰り返し」。

 演じるだけじゃない。演出も手掛ける。正反対の立ち位置に見える両者だが、「僕は同じだと思う。役者もスタッフであって、スタッフも役者であるべきだと思っている。みんなが1つのものを作るために、意見を言い合うのがいい。そうしたら、もっと高みに行けると思う」。役者としてのキャリアも四半世紀を超えた。「今でも転機だと思っています。『役者とは』とか、人生を振り返ったりはしません。今が精いっぱい。ずっとそんな感じ」とクールにほほ笑んだ。【小谷野俊哉】

 ◆渡部篤郎(わたべ・あつろう)1968年(昭43)5月5日、東京生まれ。91年にテレビ東京系「青春の門」のオーディションに合格して主演。92年の「橋のない川」で映画デビュー。95年映画「静かな生活」で日本アカデミー新人賞。99年TBS系「ケイゾク」、映画「heat after dark」で製作、主演。09年のNHK「外事警察」、14年のフジテレビ系「ビター・ブラッド」などでも話題に。180センチ、血液型A。

 ◆「銭の戦争」 韓国の漫画家パク・イングォン氏の「銭の戦争」が原作。大手証券会社で働く東大卒のエリート白石富生(草なぎ剛)は、事業に失敗した父親の自殺で多額の借金を負う。職を失い、大企業令嬢の梢(木村文乃)と婚約解消。赤松大介(渡部篤郎)経営のヤミ金融「赤松金融」に就職する。赤松が父の敵であること知った白石は、恩師の娘、未央(大島優子)の助けを得て、赤松が蓄えた20億円を手にする。だが、赤松は未央を人質に取って対抗する。

 ◆ドラマグランプリ 3月20日から26日まで日刊スポーツのホームページ「ニッカンスポーツ・コム」やスマートフォンサイト「ニッカンエンタメ・プレミアム」、携帯サイト「ニッカン芸能!」と宅配読者の携帯会員サイト「ニッカンポイントクラブ」などで昨年4月から今年3月までに放送された連続ドラマを対象に「主演女優賞」「主演男優賞」「助演女優賞」「助演男優賞」「作品賞」を選ぶアンケートを実施。各期(4、7、10、1月)ごとのベスト5、各部門計20人(作品)を候補とした。

 投票総数は2394票。男性が715票、女性が1679票。10代以下が37票、20代118票、30代257票、40代875票、50代812票、60代以上が295票だった。

※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀