女優中村玉緒(76)が18日、大阪市内で、死者への“手紙配達人”を演じた映画「ポプラの秋」(19日~シネリーブル梅田など公開)の取材会を開き、死別18年になる夫の勝新太郎さん(享年65)へ「主人が地獄にいるなら、私は天国ではなく、地獄に行きたい」と、変わらぬ思いを語った。

 映画は、本田望結(みゆ=11)の初主演作。父を失った8歳少女が、転居先で出会ったおばあさんに、亡き父への手紙をたくすなどして、話が進む。

 玉緒自身も「メールはやらないので手紙派」といい、勝さんとは「話すとケンカになるから、手紙でやりとりしていた」というのは有名な逸話でもある。

 ただ、手紙といっても、メモの走り書きのようなもの。豪快な生活ぶりで借金も多かった勝さんに「早く借金を返して。明日のご飯が食べられません」などと書いた紙を渡していた。

 「でも、私、ラブレターを書いたことも、もらったこともない。小学生時代、初恋の人には、字が汚くてラブレターを書けなかった。もらったこともない。主人からも」

 勝さんからはラブレターはおろか、走り書きメッセージメモにも返事はなかったという。玉緒は周囲の猛反対を押し切り、勝さんと結婚し、彼の豪放な生きざまに妻として、翻弄(ほんろう)され続けた。それでも、最後まで愛を貫き通し、今でも「主人に会いたい」と話す。

 自らの死後の話題にも応じ「私は棺桶には何も入れない。この世でやりたいことは全部やっていく。天国へは何も持って行く気はないし、ただ『主人に会いたい』。それだけ」と笑った。そして、その先が「天国か地獄が分からないけど」と言い、勝さんが地獄にいるなら「もちろん、私も天国ではなく、地獄に行きます」と言い切った。

 夫への愛は、失ってからなお強まっている様子。もしも、勝さんに手紙を書くなら「子どもをインターナショナル(スクール)に入れたのは、なぜか? アメリカの映画にも出られるよう、世界で活躍する人になって欲しかったからなのかな、と思う。そして私は(勝さんに)ハリウッドのスターと一緒にやってほしかった」と記すという。

 募る一方の勝さんへの思いを隠そうともせず、にこやかに話を続けた。

 また、今回、65歳差の共演となった本田は、フィギュアスケートの才能にも恵まれており、玉緒は「私としては両方、成功していただきたい。昔は子役は女優として大成しないと言われたけど、今は違う。今(現代の世の中)でよかった。フィギュアの方もお遊びではなく、真剣に続けてもらいたい」と、二兎(にと)を追い、ともに成功することを願っていた。