作曲家でシンセサイザーアーティストの冨田勲さんが5日午後2時51分、慢性心不全のため、都内の病院で死去した。84歳だった。日本コロムビアが8日、公表した。

 冨田さんは同日昼ごろ自宅で倒れ、救急搬送先の病院で家族にみとられて亡くなったという。今年11月に上演予定の新作「ドクター・コッペリウス」の創作活動に直前まで取り組んでいた。

 通夜と葬儀・告別式は、7、8日に親族のみで執り行った。後日、お別れの会が開催される予定。

 長男の富田勝氏は「父は『ドクター・コッペリウス』を完成させたいという並々ならぬ強い思いを持っていて、倒れる1時間前まで楽しそうに、そのイベントの打ち合わせをしていました。『11月までは死ねなくなっちゃったよ』と笑って言っていました」と話している。

 冨田さんはもともと低血圧で、時々立ちくらみのような症状もあったといい、勝氏は「今回倒れた時も、徐々に意識が薄れていったと思われますので、本人はまた意識が戻るつもりでいると思います」。また「父の作品の志は、なくなることはありません。これからも冨田勲をどうぞよろしくお願いいたします」とコメントした。

 冨田さんは慶大在学中に日本コロムビアで作曲家としてのキャリアをスタートさせた。63年のNHK大河ドラマの第1作「花の生涯」をはじめ、大河ドラマは「天と地と」「勝海舟」「新平家物語」などの音楽を担当。山田洋次監督の作品や、手塚治虫さんの名作アニメ「ジャングル大帝」「リボンの騎士」の音楽なども手掛けた。70年代から、シンセサイザー(電子楽器)をいち早く導入して楽曲を制作。74年に発表したアルバム「月の光」が日本人として初めて米グラミー賞(4部門)にノミネートされるなど、世界的な評価を得た。以降も発表した作品が世界的にヒットした。

 最近では12年に初音ミクとコラボレーションした「イーハトーヴ交響曲」を発表して話題になった。