電気や電力がなくなった世の中で必死に生き残る家族を描いた矢口史靖監督(49)の新作「サバイバルファミリー」(来年公開)で小日向文世(62)深津絵里(43)が夫婦を演じたことが14日、分かった。矢口監督のオリジナル脚本で、昨年9月から2カ月間撮影を行い、このほど完成した。

 矢口作品は「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」など若者の青春や成長する姿、さまざまな業界の裏側を笑いを交えて描いたものが多かった。今回は奇想天外な設定に挑戦。東京に暮らす平凡な家族が直面するリアルなサバイバルを描く。矢口監督は「文明を手放さなきゃいけなくなった時、現代人はどう生きていくのか。結構本気のサバイバルをしています」。

 小日向と深津は撮影で、顔に泥を塗りたくり、洗えない髪を表現するため、油で固めるなどした。矢口監督は「日本映画の中でも、役者さんがこれほど汚くなっていく作品はない」と話す。

 矢口監督が求めた本気のサバイバルに2人も全力で応えた。重さ100キロ超の豚に振り落とされてあばらを強打したり、寒い川で泳いだり、素っ裸になったりした小日向は「妥協しない監督が、頼もしくもあり、時々憎たらしくもあり…。が、とても楽しい現場になりました。今までに見たことのない面白い作品」と話す。深津も「監督は常に簡単なことなど求めていないのです」と過酷な撮影を振り返った。

 矢口監督は作品のアイデアを02年に練った。03年に起きた米国北部の大規模停電を見てストーリーを膨らませた。「映画に出てくる鈴木家は、小さなことから何にもできない。『自分だったら、もうちょっとできるな』なんて思いながら見て欲しい。最終的には家族っていいなということを描きたかった」と話した。

 ◆「サバイバルファミリー」 ある日、電化製品全て動かなくなった。車も動かず、トイレの水も流せず、電池もバッテリーも、スマホ、テレビ、ラジオも使えない。情報が入らないため、原因も復旧のめども分からない。東京に住む鈴木家も右往左往するが、頼りない父義之(小日向)が東京脱出を決意。妻光恵(深津)と子供たちと自転車で田舎を目指す。共演は時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄ら。