「ルパン三世」「るろうに剣心」「ローマの休日」と宝塚歌劇の異色作に主演し、唯一無二のトップ像を確立させた雪組トップスター、早霧(さぎり)せいなと、相手娘役の咲妃(さきひ)みゆが来年7月23日付で同時退団することになり、21日、同劇団が発表した。

 早霧は22日午前、大阪市内で、咲妃は同日午後、兵庫県内で退団会見を行う。トップ娘役が、トップと同時に退団を発表するのは、近年では極めて異例。

 退団公演は、フランキー堺主演の名作映画をもとにした「ミュージカル・コメディ 『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』」と、中村一徳氏が作・演出の「Show Spirit 『Dramatic “S”!』」の2本立て。宝塚大劇場は来年4月21日~5月29日。東京宝塚劇場は同6月16日に開幕し、早霧、咲妃はともに、7月23日の同東京公演千秋楽をもって退団する。

 早霧は01年入団。宙組配属。身長168センチと男役としては小柄ながら抜群の運動神経を生かしたダンス、繊細な役作りに評価が高く、09年に雪組へ移り、98年1月創設の宙組出身者では初のトップ。13年は「ベルサイユのばら」のオスカル、「Shall we ダンス?」のダンス講師と、女役も好演した。

 14年9月に雪組トップに就き、10月、人気漫画を原作にした「伯爵令嬢」でトップ初作品。昨年1月には、国民的アニメをミュージカル化した「ルパン三世」で本拠地トップお披露目。今年2月には「るろうに剣心」に主演し、相次いで2次元作品の初ミュージカル化を成功させた。

 漫画の世界から抜け出したような美貌と、体育会系的な熱いノリ。繊細で緻密な芝居作りと、プライベートは豪放で気さくなトーク。両極端な個性でファンをひきつけ、今夏には「ローマの休日」にも主演。トップとして話題作へ立て続けに臨んできた。

 今月7日に宝塚大劇場での公演が終わった「私立探偵 ケイレブ・ハント」では、熱血探偵を軽妙に好演している。今後は、同作の東京宝塚劇場公演開幕を今月25日に控える。

 咲妃は10年入団の96期生。月組から雪組へ移り、早霧のトップ就任にともない、相手娘役に迎えられた。就任直後には、早霧が咲妃と「結婚します」と宣言するなど、仲良しコンビとして知られ、咲妃も芝居巧者の早霧の相手役を懸命に務めてきた。

 2人の退団公演となる次回本拠地作の「-太陽傳」も宝塚では、異色作。日本映画界の鬼才・川島雄三監督作として、57年に公開。フランキー堺と、石原裕次郎の共演でも話題を呼び、フランキーの代表作となった軽喜劇で、「ルパン三世」も手がけた小柳奈穂子氏が演出を手掛ける。

 異端児トップの集大成は、大尽遊びに興じた男・佐平次役になる。