アニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が、11月12日の公開から7週目で興行収入(興収)8億円、動員60万人を突破した。製作費を出資する企業を集めるための、パイロットフィルム制作のため、クラウドファンディングで一般から出資を募り約3900万円を集めたことが話題になり、スタート時の公開館数も63館と小規模な、インディーズ作品としては異例の大ヒットとなった。

 片渕監督は「2016年は、映画『この世界の片隅に』の完成、公開とともに、たくさんの出会いとご縁に恵まれた年になりました。これからもよろしくおねがいいたします」とコメントした。

 「この世界の片隅に」は、広島県呉市を舞台に、戦時下の不安定な時代の中、18歳でお嫁にいった絵が得意な女性すずが、大切なものを失ってもけなげに、まっすぐ生きる姿を描いた。感動的な物語はもちろん、水彩画のような美しく優しい絵柄、主人公の声を演じた、能年玲奈から改名したのん(23)の演技力などが観客の感動を呼び、支持され、それが口コミで広がっている。

 女優吉永小百合(71)も、26日放送のTBSラジオ「今晩は吉永小百合です」(日曜午後10時半)の中で「この世界の片隅に」を紹介。「封切りになったら、本当にたくさんの方たちの支持を得て、拡大封切りになって、私はその初日に行ったんですけど、何と満員だったんですよ。すごかったです。(戦争や原爆などを経験した辛い思いを)誇張しないで、とっても淡々と描いているんですね。映像はパステル画を見るような柔らかい雰囲気でした」などと語った。

 公開館数は、初週から43館増の106館に伸び、24日、25日の週末興行成績も興収4500万円、動員3万人を記録。全国興収ランキング(興行通信社調べ)では7週連続でベスト10を維持している。年明けの1月7日からは、上映する劇場が54館増え、公開館数は累計で200館を超える予定だ。【村上幸将】