<第60回NHK紅白歌合戦を語る(2)=和田アキ子>

 女性最多出場33回目にして、トリ7回、大トリも司会も応援団長も務めて、白組出場の経験まである和田アキ子(59)だが、紅白への思いは複雑だ。「最多出場って言うけど、回数じゃない気がする。今年だって、何が何でもって思いはありません。出るのは断る理由がないだけ」と素っ気ない。79年から7回連続で落選しているからだ。

 当時を振り返っても「なぜ落選したのか今でも分からない」。それまでは9年連続出場。「ショックは大きく、悲しかった」。当たり前の大みそかを突然奪われて、初めて紅白の重みを知った。悔しさを紛らわすように、年末から海外に飛ぶようになっていった。

 それでも86年に、今度は突然復帰のオファーを受けた。「何で今さら?

 去年まではダメで、今年がOKな理由は?」。不透明な選考基準に首をかしげながらも復帰を果たすと、翌87年には、司会とトリの大役まで任される展開に。「バカやろ~。私は根に持ってるで」。屈辱は忘れていない。虫の良い手のひら返しに、不良“ミナミのアコ”の反骨心が芽生えなくもなかったが、やはり「断る理由がなかった」。

 アッコが紅白を語り出すと、延々に止まらない。それは、欠点だらけでも、あこがれ続けてしまう。初恋相手について語っているようにも聞こえる。苦言や愚痴の他方では「演歌からヒップホップまで、すべてのジャンルが一堂に会する化け物番組で、決して壊せないブランド」と表現し、出場決定日のエピソードは楽しそうに明かす。

 アッコ

 ウチでは必ず、マネジャーが(正座で)三つ指ついて「おめでとうございます」と祝福してくれる。私も同じ形で「ありがとうございます。頑張って歌います」と頭を下げるの。この瞬間に一番、紅白歌合戦というものを感じる。身が引き締まるんですよ。

 例年、報道陣は、アッコに紅白の舞台裏や人間関係についての、おもしろおかしいリップサービスを期待する。ただ、当の本人は、衣装選びに人一倍迷い、控室では極限の緊張と戦う。本番終了後には、自宅の新年会で何十回もVTRを流して、松村邦洋やISSAらアッコファミリーに「どや?

 私、かっこええやろ?」。自分の勇姿と酒に酔うのが、至福の正月だ。

 アッコ

 1年の最後にあそこで歌って、「あぁ、私は歌手だ。1年を終えるんだ」って思うんです。

 やはり、アッコは生ける“紅白の顔”だ。そこの光と影を知るからこそ、誰よりも栄光の舞台をリスペクトしている。【瀬津真也】

 ◆和田アキ子(わだ・あきこ)本名・飯塚現子。1950年(昭25)4月10日、大阪府出身。68年「星空の孤独」でデビュー。代表曲は「笑って許して」「あの鐘を鳴らすのはあなた」など。歌手以外に、バラエティー番組「アッコにおまかせ!」司会やラジオ番組などレギュラー多数。174センチ。O型。

 [2009年12月19日9時42分

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