世界的な指揮者・小沢征爾さん(74)が7日、食道がんであることを公表し、6月までの公演をすべてキャンセルして治療に専念することを明らかにした。東京都内の聖路加国際病院で主治医とともに会見。昨年末の定期検診でがんが発見されたが初期の段階で、治療法などは最終的な検査結果が出た後に話し合われるという。小沢さんは「半年後には元気で出てきます」と力強く復帰を宣言した。

 白いワイシャツに黒のジャケット姿で会見に臨んだ小沢さんは、まず最初に謝罪した。治療のために6月までの公演をすべてキャンセルすることになり「観客の皆様や関係者に大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」。本来ならば既にウィーンに旅立ち、02年から日本人で初めて音楽監督を務める国立歌劇場の「フィガロの結婚」(15日初日)の準備に入っているはずだった。今年6月いっぱいでの退任も決まっているため「全く残念です」と付け加えた。

 昨年末に受けた定期健診で、主治医の聖路加国際病院の岡田正人医師から食道がんであることを知らされた。同医師は「食道の表面にあるが初期の段階で今のところ転移も見られない」とし、現在病状を詳細に調べていると説明。1週間後に最終的な検査結果が出た後、治療法などを詰めていくとしている。検査結果が出るまでは通院を続けるという。小沢さんは血色も良く精力的な表情で「自覚症状などは全く感じていないです」とし、実兄俊夫さん(79)も15年前に食道がんにかかりながら完治したことを明らかにした。

 ここ数年は健康不安が続いている。長年の精力的な活動の疲労からか、05年には急性気管支炎を繰り返し、白内障で右目を手術。06年には帯状疱疹(ほうしん)で約1年間の休養を余儀なくされた。08、09年には椎間板(ついかんばん)ヘルニアの手術を受けている。

 「帯状疱疹(ほうしん)の復帰には1年もかかったので、今回は半年以内には元気で出てきます」と小沢さん。92年から力を注いでいる「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(8~9月、長野・松本)の総監督を予定通り務めると明言。12月から米ニューヨークのカーネギーホールで日本を特集する音楽祭の「芸術監督」に就任することも明らかにし、夏以降の活動再開を約束した。会見では長女で作家の征良さんと長男の俳優征悦から「家族みんなで力を合わせて乗り越えたいと思っています。父の応援、よろしくおねがいします」とのコメントも発表された。

 [2010年1月8日8時9分

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