【上海13日=瀬津真也】ギターの弾き語りによる9分52秒の曲「トイレの神様」がヒット中のシンガー・ソングライター植村花菜(27)が、中国の上海万博でソロライブを行った。亡き祖母との思い出をつづった詞と曲、歌声で中国の観客を泣かせた。植村は万博会場内の日本産業館にある金ピカの「世界一のトイレ」にも対面。充実の初海外ライブとなった。

 亡き祖母との幼少時代からの思い出を歌う植村の「トイレの神様」は、中国の観客をも泣かせた。「私が上海万博で歌うきっかけになった歌です。皆さんが、身近な人を大切にすることを考えるきっかけになれば、うれしいです」と、植村がギターを弾き始め、ステージのスクリーンに中国語訳が流れると、観客は、歌声に聞き耳を立て、歌詞をじっと目で追った。やがて中年女性を中心に、涙をこぼす人が出始めた。歌い終わると、会場は温かい拍手に包まれた。

 湖北省から来た魏冬玲さん(42)は「すごく感動したよ。二十数年前に亡くした自分のおばあちゃんを思い出した。トイレの神様という文化は中国にはないけど、家に帰ったらすぐにトイレをきれいにするね」と目頭を真っ赤にさせた。4曲30分のライブ3回で計約2000人を集め、初の海外公演は成功した。

 日本産業館の堺屋太一総合プロデューサー(74)の熱烈オファーに応えた植村の訪中だった。同館のテーマは「きれい、かわいい、気持ちいい。日本のつくる良い暮らしの提案」だ。いまだに劣悪なトイレ事情の中国に向けて、最新機能のトイレを展示している。白石靖副館長は「生活改善の近道は、一番汚いところをきれいにすることだと考えます。植村さんの歌は、私たちの訴えるテーマと一緒でした」と招聘(しょうへい)理由を話した。

 植村は、館内に展示する金を陶器に塗り込んだ推定700万円の「世界一のトイレ」とも対面し、「ホンマに金ピカ。歌が縁でこんなところまで来るなんて。歌は国境を超えて皆さんに伝わったし、日本出発の朝にも『上海に行ってくるね』と感謝を込めて、トイレを磨いてきたかいがありました」と感激に言葉を並べた。今年上半期に、じわじわと話題になった植村の「トイレの神様」は、海外進出も果たし、さらに国内外で広がりをみせそうだ。

 [2010年7月14日8時39分

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