1974年(昭49)のフランス映画「エマニエル夫人」などで知られるオランダ出身の女優シルビア・クリステルさんが18日までに、オランダ・アムステルダムの病院で亡くなった。60歳だった。近く、身内だけの葬儀の後、埋葬されるという。

 容体が世界中で心配されていたクリステルさんが、静かにこの世を去った。代理人のベルハーレン氏は「17日夜に就寝してから18日にかけて亡くなった」と発表した。今年1月に食道がんを患い、7月には自宅で友人のいる前で脳卒中で倒れ、そのまま入院。食道がんの治療で体力が落ちており、肝臓にも転移したがんの治療をストップせざるを得なかったという。息子のアーサーさん(37)は「早期回復を期待しているが、現実的にならなければいけない」と話していた。

 クリステルさんは、タイのバンコクでセックスに目覚めた外交官夫人を演じた「エマニエル夫人」シリーズで一世を風靡(ふうび)した。生前、世界各国で「エマニエル夫人」が公開されたことが、検閲制度が世界的に見直されたきっかけとなったと誇りに感じていたという。奔放なセックスシーンが大幅にカットされる国もあったが「多くの国では、うまくいった。(制度の見直しに)貢献できたと思うわ」と語っている。しかし、自身の仕事が原因でアーサーさんが学校でいじめにあうようになったことから、80年代後半からヌードになる仕事を断るようになったという。

 私生活では、ベルギーの作家故ウーゴ・クラウス氏と交際、アーサーさんをもうけるが別れ、近年は別の男性と交際していた。ただ、10代から極度のヘビースモーカーで、01年に咽頭がんと肺がんを患い手術を受け健康状態が悪化していた。

 ◆シルビア・クリステル

 1952年9月28日、オランダ・ユトレヒト生まれ。大学中退後、20歳でミスTVヨーロッパ選出。72年「処女シルビア・クリステル/初体験」で映画デビュー。主な作品は「エマニエル夫人」、82年「チャタレイ夫人の恋人」など。オランダ、英、フランス、ドイツ語が堪能。