作曲家佐村河内(さむらごうち)守氏(50)のゴーストライターだったと告白した新垣(にいがき)隆氏(43)が、桐朋学園大に非常勤講師の退職を願い出て大学側から認められたが、学生の署名運動などもあり決定が白紙に戻る騒動になっていることが10日、分かった。関係者によると、都内で告白会見を開く前日の今月5日、学部関係者に退職する意思を電話で伝えたという。いったん保留となったが会見後、9日までに再び連絡。大学側もこれを受け入れ、6日付の退職が決まった。

 ところが10日夜、大学側は退職の決定を白紙に戻した。新垣氏は告白会見で退職の意志をほのめかし、大学側もゴーストライター問題について「事実関係を調査した上で厳正に対処いたします」と声明を発表していた。これに対して同大の学生が寛大な対処を求める署名活動をネット上で行い、7700人以上の署名が寄せられた。大学側はこれを受け、退職を認める方針を白紙に戻した。新垣氏は辞表は提出していなかった。同大の総務部は新垣氏の退職について「現段階ではお答えできません」としている。今後は処遇をめぐって新垣氏と大学側が話し合いの場を持つことになりそうだ。

 新垣氏は6日、会見でゴーストライターを務めていた事実や、全聾(ぜんろう)という佐村河内氏が実は耳が聞こえていたと感じたなどと話した。「できることなら、仲間たちと今後も音楽は続けていきたい」とも話していた。

 会見後、広島市内に住む佐村河内氏の妻の母は「勇気を出してくれた新垣さんに感謝します。ずっと守に脅されていたと思う。職までなくされてしまって、かわいそう」と話していた。