俳優水谷豊(59)と妻の伊藤蘭(57)が、作家妹尾河童氏(81)の自伝的小説を映画化する「少年H」(降旗康男監督、13年夏公開)で、89年の結婚後初めて、共演することが7日、分かった。2人の共演は、83年から84年まで放送された日本テレビ系連続ドラマ「事件記者チャボ!」以来28年ぶり。水谷が、映画化の話が具体化した段階で伊藤との共演を希望。ベッドサイドに原作本を置くなどして自らオファーし、夫婦共演が実現した。
水谷は自らほれ込んだ「少年H」の映画化にあたり、妻伊藤を“相棒”に選んだ。「少年H」は「2時間で収められないんじゃ映画じゃない」という妹尾氏の意向で、映画化が実現しなかったが、水谷と00年にテレビ朝日系ドラマ「相棒」を立ち上げた同局の松本基弘プロデューサーが、08年夏から映画化の企画を進める中(1)少年Hの父盛夫の目線で語る形で物語を変え(2)盛夫を水谷、監督は降旗監督、という企画を09年2月に妹尾氏に持ち込んだ。
その後、水谷も妹尾氏を訪ね「何回読み返しても父親をやるのは僕だと思いました」と熱く訴え、同氏も「父親の顔に似ている。その方が実在感が増す」と映画化を認めた。それを受け母敏子役を誰にするか考えた際、水谷が「蘭さんがいいと思うんだけど、どうかな」と提案。同プロデューサーも「キュートなお母さんはなかなかいない」と伊藤をイメージしており、水谷へオファーを依頼した。
水谷は「何とかしてみるよ。でも『やろうよ』と言うのは勇気が必要で、どうやったらいいかな」と頭をひねった。ある日、原作本を伊藤のベッド脇に置き「読んでみるといいよ」と声をかけた。日々、しおりの位置が進むのを見て「読んでるな」と確認。その後も作品情報を小出しにして伊藤の“外堀”を埋め、妹尾氏との対面の場まで設定してOKを引き出した。
水谷は「戦前戦後という激動の時代を、名もなき家族が必死にけなげに乗り越えていく姿に、時代を超えて心を動かされます。夫婦共演が実現したのも『少年H』の力に他なりません」と語った。伊藤は「想像も出来なかった夫婦共演ですが(約)30年をへて、またともに1つの目標に向かえることは大きな喜びです。新鮮な気持ちで臨みたいと思っています」と意気込んだ。
撮影は5月1日に始まる予定で作品の舞台神戸や栃木、群馬、茨城、千葉、静岡など全国で行うほか、韓国での大規模ロケも行う。
◆「少年H」
昭和初めの神戸で、洋服仕立職人の父盛夫(水谷)と母敏子(伊藤)の間に生まれた肇は、母が編んだセーターの胸にイニシャル「H」が大きく編み込まれていたため「エッチ」と呼ばれた。好奇心旺盛な肇は、第2次大戦開戦後、不穏な世の中に疑問を持ち、「なんで?」を連発。盛夫から現実を見るように教えられ成長する。97年に講談社から刊行され、99、01年にフジテレビでドラマ化。盛夫を中井貴一、敏子を桃井かおりが演じ、映画化も企画されたが実現しなかった。妹尾氏自ら美術を担当した舞台も99年に上演され平田満、キムラ緑子らが出演した。




