クリント・イーストウッド監督(84)がこのほどロサンゼルス市内で、日刊スポーツなどのインタビューに応じた。21日に米軍の狙撃兵を描く監督作「アメリカン・スナイパー」が公開される。

 最近15年間で監督作は13本というハイペース。年齢を感じさせない精力的な姿勢が映画ファンを驚かせている。原動力の源を聞くと「スシさ」と答えた。「それは本当だよ。食べ物には注意している。摂生しているんだ」。いつまでも現場に立ち続けられる体力は、ヘルシーな食事が支えている。「もう1つある。好奇心だね」。言葉通り、作品ジャンルは多岐にわたる。新作を発表するたびに観客を驚かせ感心させている。

 「アメリカン・スナイパー」はイラク戦争が舞台。米軍史上最多160人を射殺した実在の狙撃兵クリス・カイルの活躍と苦悩を描いた。「私は第2次世界大戦の最中に育った。真珠湾攻撃の時は11歳、終戦は15歳。5年後に朝鮮戦争の徴兵掲示板を見ていた。ベトナム戦争が始まり、そしてイラク戦争。戦争がいつ終わるのか疑問を抱いた時期もあった」という。

 主人公は米中枢同時テロを機に戦場に向かう決意をする。「米国は特に9・11以降、報復に燃えていた。世界の中で無理に物事を推し進めれば摩擦を生じる国が必ず出てくるが、戦争をしないでいられる時期が長く続けばいい。米国は大国ゆえに、干渉過多になることがあるから気をつけないといけない」。作品は全米公開3日間の興収で、自分の監督作で最大のヒットを記録。アカデミー賞にも作品賞を含む6部門でノミネートされている。

 新作に向けて少しずつ動きだしている。「山のような脚本も少しずつ読んでいるところだけど、半年は休憩したい。監督業は好き。撮影が終わって何もしなくていい時、一体どうしたらいいか分からなくなるんだ」。「硫黄島からの手紙」は渡辺謙(55)を起用した。「いい企画さえあれば、また一緒に仕事したい。あれは、お気に入りの1本なんだ」。日米の夢タッグ再現に期待が膨らむ。(明美・トスト通信員)

 ◆「アメリカン・スナイパー」

 米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊したクリス・カイルは戦地イラクへ。高い狙撃技術で仲間を救う一方、敵から「悪魔」と恐れられた。母国と仲間を守るために戦うという思いと、無事を祈る家族の良き父でなければいけない狭間で苦悩する。主演はブラッドリー・クーパー(40)。