異例の“サードキャリア”になる。このほど、楽天の仙台・泉犬鷲寮の寮長に中村稔氏(55)が就任した。82年ドラフト3位で日本ハムに入団し、87年にパ審判部に入局。昨年引退するまで32年間、通算2876試合、日本シリーズ13回の出場を積み重ねた。親交のある長島ファームディレクターの誘いで転身を決意。「審判から球団に入るというのは、今までなかったこと」と自ら口にした。

楽天とはひそかに縁を感じていた。亡くなった星野仙一副会長からは、監督時代から顔を合わせるたび「名古屋でメシに行こう」と言われた。審判の立場から会食は実現しなかったが、愛知出身の中村氏を気にかけてくれた。13年、楽天がリーグ優勝を決めた西武戦は球審として試合を裁いた。「9回にマーくんが出てきた時、星野さんが『頼むぞ』と。僕は審判だから何もできないんだけど、そんなやりとりを覚えています」と懐かしむ。昨年9月、最後に球審を務めたのも楽天戦だった。

“審判の目”を育成にも役立てたいという。「捕手の見る目とは、また違う。投手だったら、どうしてそんなに難しいボールばかり投げようとするのか、とかね。(若手はまず)大胆に強い球を投げることが一番大事。いつでも入ってきて、オヤジ代わりに何でも言えるように寮長室のドアは常に開けておきます」。新入団選手が始動した6日、温かいまなざしを向けた。【亀山泰宏】


13年、審判員時代の中村稔氏(中央)
13年、審判員時代の中村稔氏(中央)