日本代表のFW本田圭佑(29=ACミラン)が金字塔を打ち立てた。日本(FIFAランク50位)はカンボジア(同183位)に勝利。本田は日本のW杯予選で初となる5戦連続ゴールを挙げた。後半17分から途中出場し、試合終了間際にDF藤春の左クロスを頭で合わせた。前戦から先発8人を入れ替えた日本だが、エースが途中出場でアウェーでの窮地から救った。年内最後の試合を飾り、E組首位を守った。

 超満員に膨れ上がった完全アウェーの会場が、悲鳴と絶叫に包まれた。日本の1点リードで迎えた後半ロスタイム。本田はゴール前へ走った。左の藤春から来たクロスを、ドンピシャのタイミングで頭で合わせる。超格下相手に苦しみ抜いた試合。ダメを押す1発だった。気温30度を超え、湿気が高く、真夏のような現地で、頼れるエースが大きな仕事を成し遂げた。

 歴史に刻んだ。9月3日のホーム・カンボジア戦から、日本人初のW杯予選5戦連発だ。ACミランではベンチ要員で不遇の時期にいるが、代表ではどんな時でも得点を決める。この日は先発漏れし、後半17分に宇佐美と交代で出場。終盤には1トップに入り、少ない時間でも、また決めた。

 「意外ですよね。うん、意外。誰も(W杯予選5戦連発を)してこなかったということがね。(途中から入った)FWはトライしてできるポジションではないかなと思うんです。(FWに必要な)野性感というものを、僕は持ち合わせていないんでね」

 会場周辺の光景に驚いた。アスファルトの道路で、子供たちがはだしでボールを蹴る姿が多く見られた。訪れたカンボジアはまるでブラジルのようだ。現地入り直後、本田は「5、10年後にカンボジアが日本を脅かせる存在になる」とまで言った。目にした光景は直感となり、日本はカンボジアに大苦戦。岡田体制の08年3月26日の3次予選バーレーン戦(0●1)、ザック体制でも13年の同じ3月26日ヨルダン戦(1●2)。過去にも満員の敵地で金星を与えたように、一時はあわやの展開に追い込まれた。

 「(監督に)怒られる内容だったと思います。でも(今遠征では)ほぼ全員の選手がプレーしている。こういう内容になると分かって(監督は)挑戦している。平等にチャンスを与えているし、選手と監督の信頼関係につながっている」

 先発漏れしても、日本の成長には確かな手応えがある。シンガポールから移動する機内では、南野を隣に座らせて話し込んだ。監督と同様、若手にも平等に接してきた。日本は今年、アジア相手にさえ苦戦。それでも本田は強気に言った。

 「アジア相手の戦いを得意とする選手がそろっているわけではない。でも、強い相手にもやれる能力を持った選手はそろっている」

 来年の最終予選から、自身3度目となるW杯へ。本田はまだまだ進化し続ける。【益子浩一】

 ▼W杯予選の連続試合得点記録 本田が今予選で5試合連続ゴール。85年のメキシコ大会予選でMF木村和司がマークした4試合連続を抜く日本代表史上最多記録となった。また、本田は予選に限らず15年の国際Aマッチで10ゴール。これまでの年間最多得点は13年の8得点で、自身の年間記録も更新した。