プレーバック日刊スポーツ! 過去の6月5日付紙面を振り返ります。2002年の1面&最終面(東京版)はサッカーW杯日韓大会、日本代表がW杯史上初めて挙げた「歴史的勝ち点」でした。
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<サッカーW杯:日本2-2ベルギー>◇1次リーグH組◇2002年6月4日◇埼玉スタジアム
日本が、攻めて攻めて、W杯で初めて勝ち点1を奪い取った。ベルギーに先制される苦しい滑り出しだったが、後半14分にFW鈴木隆行(25)が、MF小野伸二(22)のパスから同点ゴール。同22分にはMF稲本潤一(22)が勝ち越し弾を決めた。その8分後に同点とされ、2-2の引き分けに終わったが、世界の強豪を攻めたて、互角以上に渡り合い、16強へ、夢をつないだ。次の戦い、9日ロシア戦(横浜)に、歴史的1勝、そして1次リーグ突破をかける。
夢じゃない。幻でもない。W杯に11度出場の強豪を勝ち点3を奪う勢いで圧倒した。親善試合でも、強化試合でもない。国と国の威信をかけたピッチという名の戦場。カクテル光線に照らされた日の丸戦士たちが、地響きのような歓声の中、W杯の歴史に確かな1歩を刻んだ。
青く染まったスタジアムを、いや、日本国中を興奮に巻き込む戦いぶりだった。後半12分、FWウィルモッツの芸術的オーバーヘッドシュートで先制された2分後。サポーターから沸き起こった「ニッポン」の大合唱に後押しされて、日本の逆襲劇が始まった。
集中は途切れなかった。攻めに徹した。一瞬のスキを逃さなかった。左サイド、MF小野が相手DFの裏にフワリとしたパスを送った。そこに獲物を狙うように突っ込んだのが、鈴木だった。DFを弾き飛ばし、GKデブリーゲルと対峙(じ)。グイッと伸ばした右足の先に確かな手ごたえがあった。同点弾がネットを揺らした。
忘れかけていた快感が、全身を突き抜けた。「うれしい。形はどうあれ決められてよかった」。Jリーグ、日本代表など今年の公式戦19試合で1点も取れなかった男が、最も日本が得点を必要としたときに、一世一代のゴールを決めた。「無得点だった不安? 自信は変わっていなかった。常に前向きだった」。FWの得点力不足が叫ばれ、その「象徴」とされた鈴木が、1発で評価を覆し、日本の底力をみせつけた。
これで乗った。流れは変わった。後半22分。4年間積み上げてきたトルシエ戦術の真骨頂がさく裂する。「相手の動きが落ちた」と察知した稲本が、敵陣の高い位置で鋭くプレス。ボールを奪うと柳沢へ。壁パスで抜けた銀髪のボランチが、ドリブルから左足シュートを放ち、再び勝ち越しのゴールを決めた。「オレが決めたんだ」とばかりに自らの人さし指を、あどけない笑顔に向けてはしゃいだ。同点された後の38分には、右サイドから2人を交わすドリブル突破で鮮やかな“決勝ゴール”。惜しくも途中のプレーで反則を取られて幻となったが、「横の揺さぶりに弱い」と見抜いた稲本の攻めの姿勢が赤い悪魔をほんろうした。
前線からの激しい守備が持ち味の鈴木。生命線となる中盤を支える稲本。ともにトルシエ監督の攻撃サッカーを体現する2人は、この1年で急成長を遂げ、比例するように日本代表も進化した。チームを転々とする回り道人生だった鈴木が一躍シンデレラボーイとなったのは、初先発だった昨年のコンフェデレーションズ杯カメルーン戦の2得点。「こういう大会になると僕は気持ちが強くなるんです」。移籍したアーセナルで出場機会にめぐまれなかった稲本も「ここで結果を出せたのは、あのとき苦しんだから」と笑った。
3戦全敗で世界の壁を思い知らされた前回98年フランス大会。あれから4年。世界を相手にしても決してひるまない。果敢に攻め続けた結果の、引き分けだった。だが、それで満足はしない。「次の試合(9日・ロシア戦)が大事なんです」。稲本の言葉が、W杯1勝、そして悲願の決勝トーナメント進出が、手を伸ばせば届くところにあるのを実感させた。
<日本-ベルギー> 前半はともに慎重な試合運びで0-0で折り返したが、後半12分にベルギーFWウィルモッツのゴールで動き出した。先制され、積極性が出た日本は2分後に鈴木のゴールで同点。前線からプレスがかかるようになり、22分に稲本が勝ち越し弾を決める。森岡の負傷退場後、オフサイドトラップのかけ損ないから同点とされたが、勝ち点1を獲得した。
◆ベルギー戦の出場メンバー
GK楢崎正剛(26=名古屋)
DF松田直樹(25=横浜)
DF森岡隆三(26=清水)
※DF宮本恒靖(25=G大阪)後半26分に森岡と交代出場
DF中田浩二(22=鹿島)
MF稲本潤一(22=アーセナル)
MF中田英寿(25=パルマ)
MF小野伸二(22=フェイエノールト)
※MF三都主アレサンドロ(24=清水)後半19分に小野と交代出場
MF戸田和幸(24=清水)
MF市川大祐(22=清水)
FW鈴木隆行(25=鹿島)
※FW森島寛晃(30=C大阪)後半23分に鈴木と交代出場
FW柳沢敦(25=鹿島)
【注】※は途中出場、()内は当時の年齢、所属

